セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
セリエAの最強ドリブラーに名乗り。
パレルモの21歳、ディバラの衝撃。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/02/04 10:40
そのプレースタイルから「アグエロ2世」と呼ばれるディバラ。すでに本家を超えそうな活躍だ。
「買い取りたければ、ここへ4200万ユーロ持ってこい」
昨季のセリエB開幕時、十分な戦力とドイツW杯優勝の肩書を持つ意欲的な指導者ガットゥーゾを迎えたパレルモは、断トツのセリエB優勝候補と目されていた。
しかし新人監督はすぐに経験不足を露呈し、采配は迷走。崩壊寸前のチームを見た会長ザンパリーニは、秋の声を聴く前にガットゥーゾのクビを切った。
途中登板したイアキーニはチームをあっという間に立ち直らせ、首位奪取に成功。そのまま独走優勝を果たし、A昇格を勝ち取った。知名度ではガットゥーゾに到底及ばないものの、指導者としての実力は数倍上であることをイアキーニは結果で示したのだ。
ディバラの活躍とチームの快進撃のおかげで、放言癖で知られる名物会長ザンパリーニの舌も滑らかになるばかりだ。
今年の冬も「(移籍金0の選手ばかり狙う)ミランは火事場泥棒」「(サンプドリアが獲得した)FWエトーは終わりかけの選手」など言いたい放題。
しかし彼が単なる問題人物で終わらないのは、かつてFWカバーニやMFパストーレ(パリSG)などを発掘したように、南米の若い才能を見抜く慧眼の持ち主として一目置かれているからなのだ。
移籍市場で急騰するディバラ株に、ザンパリーニ節は止まらない。今冬、マンチェスター・Uからのオファーを断ったことを明かし、「ディバラは来季、セリエA最強の外国人プレーヤーになる。買い取りたければ、ここへ4200万ユーロを持ってこい」と豪語したのだ。
ゲームでは、両脇にメッシとロナウジーニョを引き連れて。
ディバラが才能を開花させたバルベラの地は海に近く、高い椰子の木が並ぶホームスタジアムの雰囲気は、ちょっと独特だ。
車を停めたら、すぐに年端もいかない子供たちが寄ってきて「車の番をするから」と小銭をせびってくる。
ここで断ると、さあ帰宅しようというときになって、彼らがパンクさせたタイヤを見て天を仰ぐ羽目になる。
そんな油断ならない町で、ディバラは愛されるようになった。
勝ち点を30に積み上げた今、パレルモが残留を決めるのは時間の問題だ。その先には、EL出場圏争いがある。
2月のパレルモには、インテル、ナポリ、そしてラツィオといった強豪とのカードが連なる。ディバラのゴールによって、この内のどこかが喰われる可能性は決して小さくない。
パレルモのエースFWは、プレイステーションのサッカーゲームで遊ぶとき、3トップを選ぶ。
「サイドにはメッシとロナウジーニョ、真ん中には……自分、ディバラを入れる」
最近、ディバラのゴールパフォーマンスは、“電話してくれ”や“まだ聞こえないな”といったジェスチャーに変わった。近い将来のオファーを催促するかのように。