セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
交錯するイタリアとアジアのサッカー。
デル・ピエーロは何を伝えたのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/11/12 10:30
ディアマンティ(右)に加え今夏よりジラルディーノが加入。年俸は約7億円と破格の待遇だ。
サッカーの伝道師の自覚を持ったデル・ピエーロ。
Jリーグ黎明期を思い出させる新興の熱気を牽引するのが、デリー・ディナモスFCの10番を背負うFWアレッサンドロ・デル・ピエーロだ。
オーストラリア大陸での2シーズンを終えたデル・ピエーロは、デリーに招かれ、スーパーリーグ全体のアンバサダーにも指名された。
古巣ユーベに別れを告げ、欧州を後にしたとき、彼はサッカーの伝道師となる自覚を持った。不毛の地インドに、サッカー文化そのものを根付かせようとする新リーグの理想に賛同した。
華やかさとは無縁のデリーの現実にも、打ちのめされるわけにはいかない。
「日常、ここで目にする貧困のショックは大きい。ゴミの山を漁る人たちは、そうすることで家族を養っている。われわれ(=西洋世界)の物差しで、物事を判断することはできない」
「異世界に飛び込んだら、その場所を知らなければ」
9日、ユベントスの元主将は、デリーで不惑の誕生日を迎えた。母国の新聞やTVは、新たな冒険へ踏み出したデル・ピエーロへ問いかけた。
欧州を出た経験が彼に教えるものは何か。
「うちのチームには、南部インド出身の者もパキスタンと国境を接しているカシミール地方出身の人間もいる。言葉も宗教も習慣も皆異なる。だからこそ、この種の困難に立ち向かう経験は(人を)成長させる。異世界の中に飛び込んだら、その場所を知らなければならない。相手の立場を理解しつつ、求めを訴えなければならない」
オレンジ色のユニフォームと黒いソックスに身を包むデル・ピエーロは、憧れの眼差しを向けてくる若いインド人選手たちへ歩み寄り、今日も汗を流す。