フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
スケートアメリカで町田樹が圧勝。
確実に頭角を現してきた若手たち。
posted2014/10/28 11:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Getty Images
10月24日シカゴ郊外のホフマンエステーツで、GPシリーズ開幕戦のスケートアメリカが開催された。男子は唯一日本男子の代表として出場した町田樹が優勝し、2年連続のタイトルを手にした。
完璧な滑りだった町田のSP。
町田はSPから、堂々とした風格のある演技を見せた。曲は『ラベンダーの咲く庭で』のサントラ。五輪プログラム『火の鳥』なども振付けたフィリップ・ミルズによる振付である。12人中最終滑走だった町田は4+3コンビネーションジャンプをきれいに成功させ、最後まで完璧に滑りきり、93.39と2位のジェレミー・アボットに10ポイント以上の差をつけてトップに立った。SP後の会見で、町田はこうコメントした。
「今季初めての試合で、このプログラムの初披露。緊張もしたし、プレッシャーもありました。その意味では大きなミスなく滑ったことを誇りに感じます」
満場のスタンディングオベーションを得た町田のフリー。
新フリー、ベートーヴェンの『第九』は、ことさら思い入れの深い作品だという。昨シーズン、全日本選手権のフリーに向かう直前に何気なくテレビをつけると、ドキュメンタリーを放映していた。東日本大震災で被害を受けた三陸の釜石市で、『第九』の合唱をみんなで作り上げていこうという番組だったという。
「あのとき、実は体調ボロボロの状態だった。そんな中で、『第九』に力をもらったんです」
もともと以前から滑ってみたいと思っていた音楽だった。だが「昨シーズンまでの自分だったら、とても表現しきれなかった。五輪、世界選手権という経験を乗り越えて成長したからこそ、チャレンジできるようになった音楽だと思う」と語った。
後半の3フリップで片手をつくミスはあったものの、2度の4回転トウループを成功させ、感情をたっぷりこめて滑りきった。演技が終わると、全てを出し切ったというように苦しそうに顔をゆがめながらも、満場のスタンディングオベーションに応えた。
「このプログラムは自分の力を120%出し切らないと形にならない作品。練習でもすごくハードで、まして観客の前で演じるのは楽ではなかった。でも歓声を聞いて、全てが報われた気がしました」
まだシーズンはじめとあって、全体的に転倒が続出した男子の試合だった。そんな中で、町田は世界銀メダリストに相応しい強く美しい演技を滑りきった。