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ミラン、固まる3トップの優先順位。
本田圭佑が確立したある「役割」。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2014/09/16 12:30
試合後、インザーギ監督はチームの司令塔として輝きを取り戻した本田圭佑に言葉をかけた。ミランが本当に生まれ変わったのか、次節ユベントス戦が正念場。
「このゴールは本当に美しい」
本田は、代表戦2試合にフル出場した日本から再帰国した直後だった。フィジカルコンディションは万全でなかったはずなのに、相手のマークから外れ、フリーになる動きには淀みがなかった。へディングの威力も狙いも、会心の一撃だった。
相手のサイドを崩し、流れるように奪ったゴールに、試合を中継したイタリアSKYの大御所解説者ジュゼッペ・ベルゴミも「このゴールは本当に美しい」と感嘆の声を漏らした。
狙い通り。インザーギの4-3-3は躍動している。
指導者へ転向した2年前、インザーギは4-3-3を好む理由を問われたことがある。
現役を引退したばかりだった彼は、自分はどんな戦術にも対応してきた、と前置きした上で「両脇にウイングを置いてもらったとき、(センターフォワードだった)自分がとてもプレーしやすいことに気付いたから」だと語っていた。
やはり指導者を志したガットゥーゾ(現OFIクレタ)ら元チームメイトたちに言わせれば、インザーギほど探究心を持ち、研究熱心なストライカーはいなかった。
インザーギは先月41歳になったばかりで、指導者歴は当然まだ浅い。だが、“相手の守備をどう崩すか”というテーマについて、彼以上の生きた手本を得ることは難しい。ラツィオとの開幕戦以降、ミランの選手たちのゴールへの意識は強くなる一方だ。
3トップの起用優先順位は固まりつつある。
新FWトーレスは、試合前日の練習で左足首を捻挫し、右足首の腫れが引かなかったFWエルシャーラウィとともにパルマ戦を回避した。若手ニアンは後半途中から2試合連続出場を果たしたが、ベンチには、FWパッツィーニも控えていた。
2戦を消化し、“右のアシスト役兼フィニッシャー”本田と“偽9番”メネズが、高いレベルで機能することがわかった今、インザーギの頭の中では3トップの起用優先順位が形成されつつあるにちがいない。
長いシーズンを考えれば、コンディションや対戦相手の戦術に合わせて3トップをローテーションさせることは不可避だろう。重要なのは、本田を含む前線の7人がそれぞれの役割に徹することだ。