谷口は筑波時代の恩師・風間八宏のもとへ。

　大津高の一員だった谷口も、誘ってくれた川崎には加入せず、筑波大に進学した。ただし、その理由は武藤とは異なる。

「プロになって給料をもらい、練習場に来れば練習着が整えられていて、寮に帰ればご飯も用意されている。高校を卒業して、いきなりそうした生活を送ると、世間知らずじゃないですが、そうなってしまいそうで嫌だったんです。大学を経由してプロに誘われないぐらいだったら高卒で行ってもダメでしょうし、一人暮らしをしながら大学で勉強とサッカーをすることで、成長できることもあるんじゃないかと思って」

　筑波大で風間監督と出会って「サッカー観が変わった」という谷口は4年後、大学ナンバー1ボランチという高い評価を受け、4年前にも声を掛けてくれて、恩師が指揮を執る川崎に加入した。

　大学に進んで成長を遂げ、プロ1年目から出場しているふたりを見ると、進路を真剣に考える選手たちの“受け皿”としての大学サッカーの価値が大きいことが、改めて分かる。とはいえその一方で、日本代表まで登り詰める大学サッカー経験者は、決して多くない。

　ブラジルW杯の日本代表メンバーの中で大学サッカー経験者は、長友佑都（明治大4年時にプロ入り）と伊野波雅彦（阪南大を中退してプロ入り）のふたりだけ。それまで常連だった選手を見ても、中村憲剛（中央大）と高橋秀人（東京学芸大）しかいない。

　果たして武藤と谷口はその壁を破ることができるのか。いずれにしても新監督には、「そこに目をつけましたか！」と、こちらが思わず唸ってしまう選手選考を期待したい。