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<フットボーラーのパフォーマンスを支えるアミノ酸>
山口蛍 「止まらない足で世界へ戦いを挑む」
posted2014/06/18 11:00
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
AFLO
今季はキャプテンマークを巻き、中盤の要として走り続ける。
その彼がさらなる高みを目指し、新たに取り入れたこととは──。
山口蛍の足は止まらない。常に相手の動きとボールの行方を予測し、縦パスが入れば厳しく体を寄せて奪い取る。ボールがこぼれれば、誰よりも早く反応する。守備だけじゃない。攻撃に移れば素早くパスを散らし、ゴール前にスペースがあると見るや、長い距離のスプリントも厭わず、全速力で駆け上がる。それが90分間続くのだから、味方にとっては心強く、敵にとっては極めてやっかいな存在だ。
「自分では、他の選手よりも走っているという感覚はないんですけどね。周りから『今日、めっちゃ走ってたな』と言われても、ピンと来ない(笑)。走り続けることを意識しているわけじゃなくて、自然と体が動くんです。ただ、結果的に相手より動ければ、それは武器になりますし、試合の終盤に長い距離を走れば、相手は付いてこられないですから」
彼の「止まらない足」を強烈に印象付けたのが、昨季のJ1リーグ第9節湘南戦だった。47分、丸橋祐介から柿谷曜一朗へロングパスが蹴られた瞬間、ハーフウェーライン手前にいた山口は全速力で駆け上がり、相手を置き去りに。杉本健勇からのラストパスを受け、先制ゴールを決めた。その後も運動量が落ちることはなく、終了間際の88分にも、ハーフウェーラインから一気にゴール前へ走り込み、柿谷のゴールをアシストした。
ロンドン五輪スペイン戦で疲弊した体を支えたアミノ酸。
「試合後も、動けないほど疲れたと思うことは、ほとんどない」と語る。そんな強靭な肺と足を備える彼が、唯一、強い疲労感を味わった試合がある。
「ロンドン五輪のスペイン戦だけは、さすがに疲れました。あれほどうまくパスを回された経験は、後にも先にも、あのスペイン戦以外にありません。後半、スペインは10人になったのに、それでも回されましたからね」
1対0で勝利したものの、イスコ(レアル・マドリー)やマタ(マンチェスター・U)らによるハイテンポなパス回しに翻弄された。ボールを奪えないから、さらに走らされる。さすがの山口も、疲労からピッチ上に倒れ込む場面が見られた。しかも、五輪は中2~3日の超過密日程で行なわれる。目の前の相手と戦う前に、疲労の蓄積という見えない壁を乗り越えなければならない。そんなとき、彼を支えたのがアミノ酸だった。