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打撃は質実剛健、顔は剛力彩芽?
「イチロー2世」、日本ハム・谷口雄也。
posted2014/05/27 10:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
NIKKAN SPORTS
小顔から覗かせる表情は、まだあどけなさを感じさせる。ベビーフェイス。「有名人で誰に似ているか?」と聞かれれば、彼を知るファンは女優の剛力彩芽だと口を揃える。
「まあ、自分では本当にそうは思っていないんですけどね」
日本ハムの谷口雄也は、笑みを浮かべながらも一般論をやんわりと否定する。
谷口の名が加速度的に広まったのは今年の春のことだ。
2月22日のロッテとのオープン戦で即戦力ルーキー・石川歩のストレートをバックスクリーンに叩き込み、27日の韓国・LGとの練習試合では左中間最深部へ140メートル弾を放つなど実戦でアーチを量産。首脳陣にその名を強く印象付けた。
<かわいすぎるスラッガー>
そんな見出しがスポーツ紙上で躍る。
本人は「僕は中距離タイプ。ホームランバッターではないので」と打撃スタイルを訂正してはいるが、マスコミとしてはそのほうが語呂もいいしインパクトを与えられると考えているのだろう。いずれにせよ、彼が「今年、ブレイク必至の有望株」と期待を寄せられていることだけは間違いない。
高校通算44本塁打に50m走5秒台と潜在能力抜群。
谷口は、潜在能力の高い選手である。
愛工大名電時代は甲子園出場こそ叶わなかったが、高校通算44本塁打のパワーと50メートル5秒7の俊足が評価され、「イチロー2世」と呼ばれていた。
2010年のドラフトでは5位指名ながら、ファームでは1年目からチームトップの100試合に出場。2年目も20試合連続安打を記録し、7月のイースタン・リーグ月間MVPに輝いた。9月4日には2番・ライトで一軍デビューを飾り、8回の守備で本塁への補殺で強肩をアピール。翌日の試合ではプロ初安打を含む2安打と、持ち味を十分に発揮した。
しかしながら、当時から日本ハムの外野陣は球界でも1、2を争うほどの鉄壁を誇っている。糸井嘉男、陽岱鋼、中田翔。'13年には糸井がオリックスへ移籍したが、代わりに大谷翔平がその椅子を実力で掴みとった。つまり、日本ハムで外野のレギュラーになるためには、大谷がそうであるように圧倒的な結果が求められる、というわけだ。
だが、そこでジレンマにとらわれず、しっかりと自分の足元を見つめ課題に取り組めるのが谷口の良さでもある。