沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
ハイレベルの激戦、NHKマイルカップ。
GIを勝つために必要な「武器」とは?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2014/05/10 08:00
東京コースで行われた昨年11月のベゴニア賞では、上がり33秒6の末脚でロサギガンティアを下しているショウナンワダチ。得意の左回りで戴冠なるか。
GIは、総合力の高い馬が勝つとは限らない。
GIというのは、必ずしも総合力の高い馬が勝つとは限らず、何かひとつの「武器比べ」となることが多い。欠点はあっても、突出したスピードや瞬発力などの武器を持つ馬が、優等生を負かしてしまうのだ。そうした意味で面白そうなのが、半兄にリディルやクラレントといったマイル重賞の勝ち馬がいるサトノルパン(父ディープインパクト、栗東・村山明厩舎)だ。
出遅れ癖は気性難から来るものなのかもしれないが、こういうタイプはカッカしながら走ると最後にとてつもない爆発力を見せることがままある。前走のファルコンステークスで、直線、馬群をこじあけるようにして2着に突っ込んできた末脚は、典型的な「気性爆発型」のそれに見えた。
気難しい馬をなだめすかし、ここというときに怒らせ、エネルギーを噴出させる……といった操作にかけては天下一品なのが武豊である。距離適性はまるで違うが、この馬は彼が騎乗し1989年の天皇賞・春と宝塚記念を連勝したイナリワンとイメージが重なる。
後藤浩輝の思いも乗せる、ショウナンアチーヴ。
4月27日の落馬事故で負傷した後藤浩輝の手綱で、昨年の朝日杯2着、このレースのトライアルであるニュージーランドトロフィー優勝という結果を出したショウナンアチーヴ(父ショウナンカンプ、美浦・国枝栄厩舎)も戴冠に近いところにいる。
後藤が2年前、長期のブランクを余儀なくされる落馬負傷をしたのはNHKマイルカップの直線だった。武が2010年の毎日杯で落馬負傷した嫌な記憶を、3年後に同じレースをキズナで制して吹き飛ばしたように、後藤には、この馬でNHKマイルカップを勝って、チャラにしてほしいと思っていた。
それもあって、心情的には、この馬に勝ってほしい。そして、別の大舞台でまた後藤を背に迎えるべく、待っていてほしい。そうした願いが毎度現実になるほど競馬は甘くないことはわかっている。しかし、馬というのは、人間の思いに応えようとする生き物だ。応援の一票を投じたいと思う。