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Jリーグがブンデスの草刈り場に!?
移籍金ゼロでの選手流出を防ぐ方法。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2011/01/16 08:00
アジアカップ日本代表としてドーハで練習する、FCアウクスブルクへ移籍した細貝萌
ドイツでは今、香川真司のブレイクによって日本人選手の評価が急上昇している。だが、その一方で、こんな見方が強まりつつあることも、忘れてはいけないだろう。
Jリーグのクラブは、契約延長のノウハウを持ってない――。
香川がドルトムントに入団したとき、移籍金はゼロ(FIFAが定める育成補償金が35万ユーロ・約3900万円ほど支払われただけ)だった。長谷部誠(ヴォルフスブルク)と矢野貴章(フライブルク)も移籍金ゼロ。内田篤人に関しては、鹿島との契約に推定1億5千万円の違約金が設定されていたため、シャルケはその金額を支払ったが、最近では珍しい例だ。
そのためブンデスリーガの関係者たちは「移籍金ゼロのタレントがごろごろいる」ということに気がつき始めた。この1月、新たにドイツに旅立った槙野智章(ケルン)と細貝萌(レバークーゼンから2部のアウクスブルクにレンタル)も、移籍金ゼロ。シュツットガルトへの入団が噂されている岡崎慎司も、清水との契約が切れるので移籍金は発生しない。
代表クラスの選手をタダで放出してしまうJリーグ。
ブンデスリーガにおいても、契約期間が切れて、移籍金ゼロで他チームへと旅立っていく選手はたくさんいる。だが、それはチームの中で脇役的な選手の場合のみだ。代表級の選手をタダで手放すケースはほとんどない。
ドイツ人の強化担当者の感覚からすれば、中心選手を移籍金ゼロで出してしまうのは、とても恥ずかしいことなのだ。
なのに、Jリーグには、タダで獲得できる代表選手がごろごろいる。ブンデスリーガのクラブ関係者としては笑いが止まらないだろう。
選手の立場になれば、ヨーロッパに移籍しやすくなったのはとてもいい傾向だ。新たな挑戦を求めて、どんどん次のステージを目指して旅立っていくべきだと思う。
だが、Jリーグのクラブの立場になると、移籍金ゼロというのはあまりにも痛い。育成施設に投資したり、代わりとなる選手を獲得するためには、相応の資金が必要だ。
いったいどうすれば、Jリーグは「移籍金ゼロの国外放出」を食い止めることができるだろう?