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かつての美しさはどこへ行った!?
F1のイメージを覆す新車に唖然。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2014/02/01 08:15
ヘレス合同テストでレッドブルが発表した、2014年シーズンの新車「RB10」。フロントノーズの形状をはじめ、かなり見慣れない形であることは間違いない。
レギュレーション変更で、ノーズの形に制限が。
今年のF1マシンのノーズが、なぜこのように不格好になったかといえば、安全上の理由でノーズの高さが先端から50mm後方の位置で、基準面より500mm未満から185mm未満へと大きく引き下げられたからである。これを2013年のマシンに適用してデザインすると、ノーズ全体が前方に低く伸びた「カモノハシ」型となる。
だが、このレギュレーション変更には、ほかにも細かな条件が付帯している。例えば、衝撃吸収構造は「前輪車軸より750mm以上前方に出ていなければならない」とか、「ノーズ先端から50mm後方の位置で、ノーズの断面は9000平方mm以上の断面積を有していなければならない」などというものだ。さらにノーズの先端は前輪車軸から1200mm以下とも定められている。
これらのレギュレーションを読み解くと、前輪車軸より前方750mmまで通常のノーズにし、そこから先、前輪車軸から1200mmまでの部分に断面積9000平方mmの長細い第2ノーズを設置することが可能だと解釈したデザイナーたちがいる。そして、出来上がったのがマクラーレンやザウバー、そしてウイリアムズのアリクイ・ノーズである。
しかし、いずれのノーズも美しくないのである。ただし、それもエイドリアン・ニューウェイならば、異なるアイディアで克服するのではないかという期待があった。なぜなら、2009年に空力に関するレギュレーションが変更され、みな不格好なフロントウイングを登場させた際も、ニューウェイだけは美しいフォルムのニューマシンをデザインしてきたからだ。
「F1マシンは美しくなければならないと思っている」
果たして、ウインターテストがスタートするスペイン・ヘレスに登場したレッドブルの2014年マシン、RB10のノーズは「アリクイ」ならぬ 「ゾウムシ」だったのである。同じく発表されたメルセデスAMG、トロ・ロッソ、フォース・インディア、ケータハムのノーズも皆、同様。共通点は奇妙なノーズだということだ。それは美しいF1マシンがサーキットから姿を消した瞬間であった。
そのことを残念に感じているのは、F1ファンだけではない。そのようなマシンをデザインしなければならなかった、当のデザイナーたちも同様だ。
「FIAは安全性の面を考えて、ノーズに関するレギュレーションを変更したのだろうが、今回のレギュレーションを読めば、ノーズの形状はどうしてもこのような解釈となってしまう。はっきり言って醜いし、デザイナーとして、不愉快なほど恥ずかしい。なぜなら、私はF1マシンは美しくなければならないと思っているからだ」
ニューウェイがデザインしたノーズには違和感を感じるが、ニューウェイの言葉には、同意するしかない。