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山本昌がラジコンを封印した理由。
「50歳まで投げる」ためのオフとは。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byToshiya Kondo
posted2014/01/09 10:30
トレーニング自体は好きだという山本昌。現在48歳。いつまでも彼が投げる姿を見ていたい。
2013年は12月31日までトレーニングを続け、年が明けると1月2日にはナゴヤ球場を訪れキャッチボールで汗を流した。
プロ31年目のシーズンを迎える48歳の大ベテランは、とにかく休み知らず、なのである。
「だってさ、家にいたって暇なんだもん」
山本昌は、決まってそう言う。
盟友・山崎武司は現役時代、「俺は暇でも練習しない!」と豪快に言ってのけたが、むしろ、その考え方こそプロ野球選手の大半の心情を代弁している、と言えるだろう。休める時はしっかり休む。約10カ月。多ければポストシーズンを含め144試合以上も戦い抜かなければならない過酷さを鑑みれば、戦士にも休息は必要なのだ。
ただ、山本昌にしてみれば、それも単なる固定観念に過ぎない。
トレーニングを続けるわけ。それはいたってシンプルな心構えがあってこそ。山本昌は「暇」の真意について、このように説明してくれたことがあった。
40歳までは「休むことも大事」とオフを謳歌していた。
「古いパソコンってシステムが立ち上がるまでの時間が長いじゃない。それと同じなんだよね。山崎なんかは元々体が柔らかいからすぐに動けるんだろうけど、僕は固いから無理。1月の自主トレから徐々に体を温めていってキャンプで仕上げるとなると、中盤くらいまで時間がかかっちゃう。そうなると万全な状態で開幕に臨めなくなるじゃない。トレーニングを続けていれば、少なくとも『肩やひじが痛いな』なんてことにはならないから」
現在では、1年のうち完全オフは10日程度だというが、30年にも亘りストイックにトレーニングを積んできたわけではない。40歳を迎えるまでは、どちらかと言えば「休むことも大事」とオフを謳歌していた。
山本昌と言えば、球界きっての「ラジコン好き」として知られている。
左ひざを手術した1995年、元から興味があったことで始めたラジコンに魅了され、オフになると趣味として没頭するようになった。
シーズンの全日程が終了した直後から、全国大会へ向け現地で合宿に入る。サーキットで自身の愛車を走らせながらアスファルトの質や温度を確かめ、タイヤなどベストなパーツの組み合わせを研究する。日数にして1カ月ほど。お蔭で、国内でもトップクラスの実力を身に付けるまで成長を遂げた。