濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER

“ミスターDEEP”長南亮、万感の引退。
最後の闘いに込めたメッセージとは? 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

PROFILE

photograph bySusumu Nagao

posted2013/10/26 08:01

“ミスターDEEP”長南亮、万感の引退。最後の闘いに込めたメッセージとは?<Number Web> photograph by Susumu Nagao

PRIDE、UFC、戦極など多くのリングで活躍した長南亮。最後に故郷DEEPに錦を飾って引退した。

長南亮のすべてが出たラストマッチ。

 長南には、二つのイメージがある。一つは“殺戮ピラニア”と呼ばれたバイオレンスなファイト。どんなポジションからでも殴り、蹴り、時には飛びヒザ蹴りなどの奇襲も。型にはまらない闘いぶりに惹かれるファンは多い。

 同時に“知将”というイメージもある。UFCのブレイク以前からアメリカで最先端の技術とトレーニング法を学び、それを日本に持ち帰った。昨年オープンした彼のジムTRIBE TOKYO M.M.Aにはケージ(金網)も設置され、プロ練習には様々なジムから選手が集う。青木真也など、所属外でも彼にセコンドを依頼する選手もいるほどだ。

 この日のラストマッチでは、そんな長南のすべてが出た。1ラウンド、サウスポースタイルで深く腰を落としたホーンバックルとの距離感を合わせるとテイクダウンに成功。2ラウンド開始早々、1ラウンドとまったく同じタイミングでタックルを決めた。そこからパウンドを連打し、ホーンバックルの三角絞めをクリアすると顔面に蹴りを見舞う。さらに3ラウンドには、カニ挟みからのヒールホールドで満員の観客を沸かせた。

アンデウソン・シウバを破った思い出の技。

 長南のカニ挟みとヒールホールドは、格闘技ファンなら誰もが知っている技だと言っていい。2004年の大晦日、後にUFC王者となるアンデウソン・シウバとの一戦で大逆転勝利を呼び込んだフィニッシュホールド。今でも、MMA歴代ベストサブミッションに数えられる“思い出の一発”を引退試合で繰り出すのだからたまらない。

 だが、これは余裕の表れやファンサービスではなかった。試合後の長南は、その狙いをこう明かしている。

「カニ挟みは長身のサウスポーにオーソドックスの選手がかけると決まりやすいんですよ。そういう意味で今回はアンデウソン戦と一緒だった。ただ、すぐにはかからないから打撃を当てて、意識を散らしてから3ラウンドに一発勝負だなと」

 派手で破天荒。しかしその裏には緻密な読みと技術があったのだ。「打撃、テイクダウン、サブミッション。全部出しきりました」という言葉通りの試合だった。

【次ページ】 引退セレモニーを行わなかった真意とは。

BACK 1 2 3 NEXT
長南亮
マモル
前田吉朗
白井祐矢
村山暁洋
佐藤豪則

格闘技の前後の記事

ページトップ