濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
後楽園だけでなく地方大会も大成功。
立ち技格闘技Krush、空前の充実期。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2013/09/09 10:30
9月1日のKrush名古屋大会メインイベント、野杁正明は3度目の対決ではじめて久保優太を破り「ベルトをずっと守りたい。誰の挑戦でも受ける」とコメントした。
広島でもKrushらしい、スリリングな打撃戦。
しかも、試合内容がいかにもKrushらしいものだった。2R、プリリップのパンチで寺戸が2度のダウン。絶体絶命のピンチからローキックで盛り返し、最終5Rに2回、ダウンを奪い返して寺戸が逆転の判定勝利を収めた。“勝ってナンボ”の地元凱旋マッチに勝利しただけでなく、これ以上ないというほどスリリングな打撃戦を展開してみせたのだ。誰が見ても迫力が伝わる試合こそ、Krushの真骨頂。寺戸はそれを、初の広島大会で体現してみせたのである。
名古屋大会は、さらに豪華版だった。全国レベルの強豪を数多く輩出している土地らしく、後半5試合は東京対名古屋の5vs5対抗戦。K-1 WORLD MAXのトップ選手として活躍した佐藤嘉洋もチーム名古屋の副将として名を連ねた。ちなみに、出場選手10人がこれまでに獲得したタイトルは、パンフレットによると合計20にも及ぶ。この大会は、東京並みどころか東京でもめったに見られないオールスター興行だったのだ。
ここでも、派手な打ち合いあり、豪快なKOありのKrushらしい試合が続いた。セミファイナルでは、佐藤が新鋭・松倉信太郎を相手に横綱相撲で判定勝利。そしてメインでは、日本の立ち技格闘技界において最高のカードが実現した。
名古屋大会にふさわしいタイトルマッチが実現。
Krush-67kgタイトルマッチ、王者・久保優太に対峙した挑戦者は野杁(のいり)正明である。両者は過去に2度対戦し、久保が2勝。最初の対戦はK-1 MAX-63kgトーナメントの準決勝、2度目は欧州を本拠地とするGLORYの日本大会、65kgワールドスラム(トーナメント)決勝戦だった。文字通りの“メジャー級”マッチメイクであり、それが名古屋で実現するという出し惜しみのなさもKrushならではだろう。
3度目の対戦とあって、お互い慎重な試合ぶり。決して派手な攻防にはならなかった。だが細かい駆け引き、技術の攻防がもたらす緊張感は並大抵ではない。久保が距離を詰めてボディブローの連打を狙い、そこに野杁がヒザを返す。野杁は普段とは構えを変え、サウスポーから攻撃する場面もあった。
野杁の地元、名古屋での闘いというシチュエーションも、試合のテンションを高めた。東京での試合とは応援の量も熱気も違う。地元でのリベンジマッチ、かつタイトル戦という最高の舞台設定に、野杁は「これで負けたら、あと何をすればいいのか分からないっていうくらい練習してきました」と語っている。