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齋藤学の武器はドリブルではない!?
パスを“出させる”動きで勝負せよ。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/08/03 08:02
東アジアカップベストゴールとの呼び声も高い、齋藤学がオーストラリア戦に決めたドリブルゴール。しかし、ドリブル以上の影響力をチームに及ぼす可能性を齋藤は秘めている。
日本代表に最も必要なのは“岡崎の動き”である。
香川や清武弘嗣も、小さなスペースに飛び込むセンスは抜群である。しかし長い距離を走って相手の意識を引っ張り、味方の攻撃エリアを拡大させられる選手は岡崎しかいない。しかもそれが世界に通用する武器であることは、コンフェデレーションズカップを通じて明らかになった。
つまり、今の日本代表にとって最も手薄なのは、選手層の薄さが指摘されるセンターフォワードでもボランチでもセンターバックでもなく、資質としての“岡崎の動き”である。
柏戦で齋藤は、この動きを何度も見せた。
前述したドリブルに持ち込むいくつかのプレーもその一例だが、9分には中村俊輔が、18分には中町公祐が中盤の底でパスを受けた瞬間に猛然とダッシュし、相手最終ラインの背後を突く動きでミドルパスを引き出した。69分にも巧みな動き出しで中町のパスを引き出し、シュートまで持ち込んでいる。
受け手の動き出しの良さにつられて、出し手が“チャレンジ”のパスを蹴りたくなる――。横浜FMの中盤と齋藤の関係には、そうしたシーンが何度も見られた。
クサビのパスへのセンスが、動きの質の目安になる。
そう言えば1年半ほど前、横浜FMのアカデミー部門を統括し、もう20年近くもこのクラブで育成に携わってきた和田武倫氏に聞いた話を思い出した。「これまで見てきた選手の中で最も印象的だったのは?」という問いに、和田氏はこう答えている。
「俊輔はもちろんですが、小学校4年生の頃の石川直宏を初めて見た時の衝撃は今でも忘れられませんし、小・中学生時代の大橋正博も本当にすごかったですね。それから、最近で言えば齋藤学や小野裕二も同じように別格の存在でした。彼らに共通している能力はいくつかあるんですが、まずは技術、それから判断力、それらに加えて、オフザボールの動きの質ですね。私はクサビのパスを一つの目安としているんですが、そういう選手は小さい頃からクサビのパスを出せるし、受けられる。つまり、オフザボールの動きの質が高い」
味方のパスを引き出す動きの質、オフザボールこそが齋藤の武器であり、岡崎にしかそれを求めることができない現日本代表の弱点である。
齋藤のフル代表入りの可能性について、元日本代表MFで解説者の福西崇史はこう話す。
「個で局面を打開する能力は柿谷(曜一朗)と並んでズバ抜けている。ただ、残り1年という時間を考えると、今のレギュラーと同等のコンビネーションを作るのは難しい。即戦力というわけではないけど、相手にとっては間違いなく嫌なタイプ。だから、ジョーカー的な立ち位置がハマる気がする」