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齋藤学の武器はドリブルではない!?
パスを“出させる”動きで勝負せよ。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/08/03 08:02
東アジアカップベストゴールとの呼び声も高い、齋藤学がオーストラリア戦に決めたドリブルゴール。しかし、ドリブル以上の影響力をチームに及ぼす可能性を齋藤は秘めている。
しかし齋藤がアピールすべきは、ドリブルではない?
「止められちゃったシーンは、本当に僕、抜け出していたんで、ああいう形を作れればビッグチャンスが生まれると思いますね」
齋藤のドリブルは直線的だが、ボールタッチ数はかなり多い。それでいてスピードを殺すことなく、上体の動きやステップワークで自身の重心を小刻みに移動する。それによって生まれる緩急の変化で相手の重心を揺さぶり、バランスが崩れたところでシュートやパスに持ち込む。確かにそのスタイルには、しばしば例えられるリオネル・メッシとの共通点を見ることができる。
ドリブラーとしてのポテンシャルは、今や間違いなく日本人屈指のレベルにある。東アジアカップのオーストラリア戦でその片鱗を示したことを考えれば、1年後のブラジルW杯を見据えた継続的な代表入りが期待されても不思議ではない。
しかし個人的には、フル代表入りを果たすために齋藤がアピールすべきポイントは、ドリブラーとしての才能ではないと考えている。次々に相手をかわしてフィニッシュに持ち込むドリブルは、もちろん切れ味を磨き続けてほしい武器ではあるが、極端に言えばそれはあくまで付加価値に過ぎない。それよりもはるかに価値があり、今の日本代表に決定的に不足している能力を齋藤は本質的に備えている。
日本代表で岡崎慎司だけが持つ、ある特性とは。
コンフェデレーションズカップで浮き彫りになったのは、代えが利かない岡崎慎司の存在感だった。
イタリア戦とメキシコ戦でゴールを奪った決定力はもちろんだが、特筆すべきは相手の組織を壊すランニング、つまりオフザボールの動きの質である。
ボールの流れを読んで自らのプレーエリアを細かく変化させ、チームメートの動きを見ながらそれに修正を加える。1トップにクサビのパスが入ればポストワークのその先の流れを呼んで相手が嫌がるスペースに走り込み、ボールを保持する最終ラインが相手のプレスを受ければ、平凡なクリアをパスに変えるためのフリーランニングを試みる。常に相手の背後のスペースを狙っている遠藤保仁との阿吽の呼吸は日本代表にとって大きな武器であり、それはゴールの可能性を直接的に高めるだけでなく、間接的に本田圭佑や香川真司の動きのサポートになっていることは言うまでもない。