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「熊缶」を携えて峠を歩き、
アメリカ本土最高峰で見た朝日。 

text by

井手裕介

井手裕介Yusuke Ide

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photograph byYusuke Ide

posted2013/07/21 08:01

「熊缶」を携えて峠を歩き、アメリカ本土最高峰で見た朝日。<Number Web> photograph by Yusuke Ide

アメリカ本土最高峰のホイットニー山頂でワイルドな記念写真をとる井手くん。日焼けとヒゲでたくましくなってきた。

感謝の気持ちを忘れてはいけないが……。

 当たり前のことだが、この旅が多くの人の協力によって成立していることを改めて感じる。

「一人旅」「徒歩で」「自分の力で」とはいうものの、実際には町へ降りる際には毎回ヒッチハイクをしているし、困った時にはいつも周りの人が助けてくれる。感謝の気持ちを忘れてはいけないと思う。

 とはいいつつ、やはりヒッチハイクはなかなかタフな仕事なのは間違いがない。

 Bishopから登山口に戻るのには丸一日を要してしまった。

 その時は正直、感謝の気持ちどころか「なんでだよ」「どうしてうまくいかないんだ」と怒りの気持ちすら芽生えてしまったのだが、そもそもヒッチハイクとは人の好意に寄りかかる図々しい行為なので、僕が怒るのはお門違いだ。

 それでも、歩くスピードとはいえ、自分が足を前に踏み出すことで確実に前に進む日々を繰り返していると、こういった不確定要素の強い進み方には苛ついてしまう。

意外とみんな、自分の町のことを知らない。

 その日は朝から気合を入れて路上に立った。登山口が遠いし、前回のこともあったので、なんとなく苦労しそうなことは分かっていたからだ。「朝マック」してテイクアウトしたブリトーを片手にザックを置いて親指を立てる。

 少しすると、すぐ近くの店から主人が出てきて、ここでヒッチハイクするのはやめてくれと言う。そして、バスが隣町のIndependenceまで走っているから、とりあえずそこまで行ってみたらどうかと提案された。

 なるほど、確かにここは車の通りが多いものの、バックパッカーを拾ってくれそうな気配はない。迷惑をかけてすまなかったと詫び、バスの時刻表と停車場を調べるべく地元の人たちにインタビューを開始した。

 驚いたのは、皆意外と自分の町のことを知らないということだ。

 人によって情報が食い違っていたり、地図をみせてもキョトンとしていたり。あの人に聞けばわかるよと言われ、たらい回しにされてしまう。重いザックを背負って町を徘徊するのは、山歩き以上に疲れる。

 結果的に分かったのは、13時と17時の2本だけバスが出ているということだ。今は10時、時間を潰そうと思い、バックパッカーには不釣り合いなお洒落カフェに入る。

【次ページ】 Sweat Jesusとの再会、もう一度試みるヒッチハイク。

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