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マット・ハーヴィとメッツの復活。
~ドクターKの系譜に連なる超新星~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2013/05/19 08:01
4戦すべて被安打4以下という驚異の投球で開幕4連勝を飾り、4月のナ・リーグMVPを獲得したマット・ハーヴィ。“ドクターK”ことドワイト・グッデンの再来となるのか。
グッデンで止まったままの大投手の系譜。
歴史を振り返るとすぐに気づかされることだが、メッツは大体、15年に1度の割合で収穫期を迎える。
1度目は、トム・シーヴァーやジェリー・クースマンが活躍した1969年の「ミラクル・メッツ」時代。2度目は、グッデンやロン・ダーリングを擁してワールドシリーズを制した86年。そして3度目は、マイク・ハンプトンやボビー・ジョーンズらが投げてナ・リーグのペナントを獲得した2000年。
3度の収穫期に共通していえるのは、生え抜きの投手が才能を開花させていることだ。シーヴァー、グッデン、ジョーンズという顔ぶれ(シーヴァーの場合は初めブレーヴスにドラフトされ、それが無効とされてメッツ入りしたのだが)を見れば、これはただちにうなずけるはずだ。
が、ざっくり言ってしまうと、大投手の系譜は、シーヴァーからグッデンに引き継がれたところでぴたりと停止している。
30年で750人以上の投手をドラフトしながら、だれひとり大成せず。
グッデンがドラフトされたのは1982年のことだが、以後のメッツは30年間で750人を超える投手をドラフトしながら、だれひとり大成させることができなかった。かろうじて合格点に達したのは、ジョーンズ(メッツで74勝56敗)、リック・アギレラ(メッツで37勝27敗)、ジェイソン・イズリングハウゼン(メッツで21勝24敗)といったところか。
こういう経緯があるだけに、ハーヴィの出現は、いやが上にも期待をかきたてる。
実際の話、デビューして17試合の成績を比較してみると、ハーヴィが残した数字(108回3分の2を投げて防御率=2.07。9回当たり奪三振=10.6。9回当たり与四球=3.1)は、グッデンの数字(111回を投げて2.84/10.8/3.4)やシーヴァーの数字(129回を投げて2.65/5.3/2.4)に匹敵する(三振奪取率はグッデンがトップ。与四球率の低さではシーヴァーがトップ、防御率ではハーヴィがトップ)。断言するのは時期尚早かもしれないが、ハーヴィはかなりの大器と見てよいと思う。