ティーショットのピンポジションを尋ねるのは好調の証。

　もちろんプレーに関する一切に口をつぐんでいるわけではない。特にパッティングに際しては選手とキャディーらしいやり取りになる。

「グリーン上は昔より忙しくなりましたね。遼がラインを聞いてくることが多くなった。6メートルのパットなら2メートル間隔で、ここからそこまではどれくらい切れるのか。いろんなディボットを見つけて、そこまでならどう切れるのかとイメージを作っていくんです。50センチでラインもクソもないだろうって時もあるんだけど（笑）」

　パッティングの時に石川がカップとボールを結んだ線上を行ったり来たりしている場面をよく見かけるが、こうした確認作業を行いながら細かく狙いを定めているのだ。だから目印となるようなディボットがなく、きれいに仕上げられたグリーンは、転がりはよくとも意外と苦手なのだという。

　さらに、加藤キャディーはティーグラウンドで石川から受ける質問を調子のバロメーターの1つにしていた。

「調子がいい時ほどティーグラウンドでピンポジションまで聞いてくる。58を出した時はほぼ全ホールでティーショットの前にピンポジションを聞いてきました」

　1打目からピン位置を計算してコースマネジメントを練る。それが実行できるショットの安定感と気持ちの余裕があるから、スコアは自ずといいものになるというわけだ。

他愛のない会話と分かっていても気になってしまう。

　それでもやはりゴルフについての会話をしている時間は、クラブを振っている時間と同じくらいわずかなものでしかないということだ。そもそも4時間以上かかるラウンドを4日間繰り返すトーナメントにおいて、ずっと緊張感を保ち続けることは相当に困難であることは間違いない。ショットやパットを打つ瞬間だけはギュッと集中力を押し固め、それ以外の時は他のことを考えてるぐらいがちょうどいいのかもしれない。

　フェアウエーを歩く石川が加藤キャディーと話しながら表情を変える。笑っていたり、やけに真剣そうだったり。こちらとしてはその一瞬に想像をたくましくしてしまうわけだが、おそらくほとんどの場合は大した意味などない。しかし、今度は逆にどれほど他愛のない話をしているのかも少し気になっちゃうのである。