野球クロスロードBACK NUMBER
今年は“エース候補”から脱皮する!
中日・伊藤準規、背番号18の重み。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/02/23 08:01
クライマックスシリーズ・ファイナルステージ第2戦での伊藤。140キロ台後半の直球と鋭く落ちるフォークで巨人打線を翻弄し続けた。
投球フォームが、より「吉見的」になっていた。
軸となる右足に溜めを作る。テイクバックの際に左腕を真っ直ぐ伸ばしてから、えぐるようにして鋭く胸元に引き戻し、しっかりと腕を振り切る。
中日のエース・吉見一起のそれと、どことなく似ている。
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伊藤準規は、春季キャンプで自分の形を固める作業を最優先に取り組んでいる。
キャンプ初日から精力的に動いた。
エースの吉見から受けた指導を細かく意識して、得た手応え。
全体練習後にチームの先輩である吉見の指導を受け、ブルペンで確かめるようにボールを投げる。ポイントは、主に股関節と肩甲骨。双方の可動域を効果的に使うことに意識を集中させる。2日目以降も、キャッチボールとブルペンでは、まず、股関節を開いた状態で投球を開始するなど、その作業はどこまでも細かい。
「フォームの形は常に意識して。感覚的な部分を確かめながら投げています。ストレートもいい感じですし、カーブ、スライダー、変化球も今のところ手応えはありますね」
伊藤は、満足げな表情を浮かべながら、現在の自分に好感触を抱く。
プロ5年目の今季、チームが伊藤に寄せる期待は大きい。それは単に、22歳という若さや、150キロ近い快速球に切れ味鋭いスライダー、フォークといった変化球を含めたポテンシャルだけが要素ではない。
球界のエースナンバーを背負う伊藤が抱える葛藤とは?
背番号18――。
球界のエースナンバーと言われる番号を背負う男だからこそ、その期待値も膨らんでいくのだ。
だが伊藤の言葉からは、自身が付ける背番号に対して、ある種の葛藤を抱いている印象を受けた。
「18番だからどうこうというのは、個人的にはないです。でも、周りはそういう目で見てはくれないので、責任感がゼロかといったらそういうわけではありません」