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張本勲の「喝!」に違和感が……。
岩隈久志、異色の“エース論”とは? 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2010/07/01 10:30

張本勲の「喝!」に違和感が……。岩隈久志、異色の“エース論”とは?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 楽天の岩隈久志は、いわゆる昔ながらの「エース論」では、なかなか解釈するのが難しい選手だ。

 5月22日の巨人戦で先発した岩隈は、3-3の同点で迎えた8回表、1死を取った時点で中継ぎ投手にマウンドを譲った。結果的にリリーフした投手が2失点してしまい、楽天は3-5で敗れた。

 その降板に対し、翌日に放送されたTBSの『サンデーモーニング』の名物コーナー、「御意見番スポーツ」の中で、野球評論家の張本勲が例のごとく「喝」とやった。

 同コーナーでは、同じく野球評論家の「大沢親分」こと大沢啓二と張本の2人が、取り上げたいくつかのトピックに対し、良いと思ったプレーや言動には「あっぱれ!」と称賛し、逆に良くないと思った場合に「喝!」と叱責するのが恒例となっている。

 張本の言い分は要約すればこうだった。

「100球も投げていないのに、エースが同点でマウンドを降りてはいけない。8回、9回はいちばん苦しいところ。この人は精神力が弱いと思う」

精神力が弱いというより、むしろ強すぎるのでは?

 この出来事は、その後、ちょっとした「事件」を巻き起こし話題になった。

 というのも、張本のコメントに対し、そのとき同番組のコメンテイターとして出演していたジャーナリストの江川紹子が異論を挟んだからだ。6月18日の江川のツイッターを通した発言によると、張本はその反論に気分を害し、以降、江川を番組に出演させないようTBSに圧力をかけたのだという。

 昔気質の張本にその場であえて反論する必要があったのかどうかは別として、私も張本の主張には素直にうなずくことはできなかった。反論があるというよりは、違和感を覚えた。

 精神力うんぬんということで議論するのであれば、むしろ、岩隈ほど精神力が強い選手はいないと思うのだ。

【次ページ】 張本より野村前監督の方が岩隈に不満をもらしていた。

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