日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
なぜ、ザックはメンバーを固定する?
2013年も「耐える力」が鍵になる!
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/12/24 08:02
2012年のザックジャパンの戦績は8勝2敗2引き分け。2月のW杯3次予選ウズベキスタン戦は、ホームでの唯一の敗戦となった。
這い上がるのは当たり前。問題はその先に――。
ザックジャパンの練習は概ね非公開が多いが、冒頭の15分間は毎度公開される。練習前、個々でアップするなかで彼は一人離れて、ひざを中心に黙々とストレッチをするのが常だ。表情に色はなく、ただただ全神経を注いで心のなかでひざと会話を交わしていたように見える。
苦境から這い上がってみせるという覚悟、いや、這い上がるのは当たり前でその先に何を自分にもたらせるかという感覚だろうか。「耐」を超越してはいるが、彼が今年、苦境のなかでさらなる成長を遂げてきたことは事実である。
苦境にもめげず練習に取り組み、歓喜の“復活”を遂げた長谷部誠。
例をあげれば、長谷部誠。
彼は今夏、移籍に動いた経緯もあって、フェリックス・マガトから構想外にされて完全に干された。8試合連続のベンチ外という屈辱。しかしそれでも彼はグチひとつこぼすことなくトレーニングに明け暮れたという。
代表でも試合勘のなさが影響して、らしくないパスミスが多かった。10月の欧州遠征、フランス戦の低調なパフォーマンスに、先発落ちの気配すら漂い始めていた。しかしここで彼は踏ん張った。続くブラジル戦では動きにキレが戻り、ミドルシュートもあれば、守備ではカカからボールを奪い取る場面もあった。本来の長谷部からすればまだまだ物足りないとはいえ、下を向くことなくコンディションをつくってきたからこそ、試合勘が戻ってくればやれるということを証明することができた。
希望を見出したブラジル戦の後、そのマガトが解任された。ギュンター・ケストナー体制になってから長谷部は先発に復帰。試合に出る喜びに満ち溢れているように見える。それもこれも彼が苦境にめげることなく、前向きに取り組んできた成果だと言える。
細貝萌が、サブながらザッケローニから厚い信頼を受ける理由。
例をあげれば、細貝萌。
彼は本田、長谷部と立場が違って、代表ではサブに置かれている。ザックジャパン立ち上げから参加しながらも、先発で起用されたのは3度しかない。今年に限ると5月23日のアゼルバイジャン戦のみだ。
サブという「苦境」。しかし細貝という男は、交代して出場すると100%のファイトをする。フランス戦でも流れを変えることに一役買い、ブラジル戦でも相手ボールを奪う役割を果たした(ボールを持ってからの展開に課題はあったが……)。8月のベネズエラ戦から先のオマーン戦まで6試合連続で途中出場中。サブではあるものの、細貝に対するザッケローニの信頼は相当に厚い。
代表での苦境ばかりでなく、彼はアウクスブルクでの安泰を捨てて今季レンタル元のレバークーゼンに復帰。シーズン序盤こそ出場機会に恵まれなかったものの、今ではサイドバック、ボランチとユーティリティーを発揮して先発の座を勝ち取っている。彼もまた苦境をバネにしてきた一人である。