メディアウオッチングBACK NUMBER
19年ぶりに文庫で復刊!
カズの激動の半生が甦る。
~「足に魂こめました」を読む~
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph bySports Graphic Number
posted2012/12/05 06:00
『「足に魂こめました」カズが語った[三浦知良]』 一志治夫著 文春文庫 571円+税
著者が「あとがき」で触れた“あの頃”と“その後”。
'92年秋に読売クラブの食堂で初めて会ってから20年、一志は今もカズの姿を追い続けている。彼は19年前に刊行されたこの本の文庫化に際して、原稿用紙70枚分もの「あとがき」を加えた。そこには、本書を書き上げた“あの頃”の自身やカズに対する思いが書かれている。
「改めて読み返してみると、まだカズに対して遠慮している表現もあり、突っ込み不足の部分も多々見受けられる。カズもいまに比べると、インタビューへの集中力は著しく劣っていたように思う。いずれにしても、全体的に雑な感じが否めないのだ」
もちろん、“その後”を追い続けた彼だからこそ去来する思いもある。
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「カズは職人なのだと思う。毎日コツコツと練習を積み重ねながら、熟練域を少しずつ広げていく職人。世間が持つカズのイメージとは少し違うのかもしれないが、カズには『愚直』という言葉がぴったりくる」
「いよいよ、熟成を問うときが近づいてきたのかもしれない」
そして最後を、こう結ぶ。
「いよいよ、その二〇年間ために溜めてきたものを吐き出し、熟成を問うときが近づいてきたのかもしれない」
自分年表は、進むべき未来を見極めるためのツールだ。もし日本サッカーの未来を見たいと願うなら、その答えは、日本サッカーの歴史を作ってきたカズの、一志が描く物語にあるのかもしれない。