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優勝の秘密は“バランス感覚”にあり!
巨人の絶妙なドラフト戦略を読み解く。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/10/03 10:30
東海大では首都大学リーグで通算37勝4敗、防御率0.57の成績を挙げた最速157km右腕の菅野智之。今季は大学に籍を残し、走り込みや投げ込みの強化トレーニングを続けてきた。
セ・リーグは巨人が圧倒的な強さを発揮して3年ぶりに優勝した。優勝が決定した9月21日現在、2位中日につけたゲーム差は11。「盤石」と形容してもいいと思う。優勝に貢献した選手たちのドラフト順位を見ると、巨人の強さがあらためて実感できる。
[野手]
亀井義行 '04年4巡
松本哲也 '06年育成ドラフト3巡
坂本勇人 '06年高校生ドラフト1巡
藤村大介 '07年高校生ドラフト1巡
長野久義 '09年1位
[投手]
内海哲也 '03年自由枠
西村健太朗 '03年2巡
山口鉄也 '05年育成ドラフト1巡
福田聡志 '05年大学&社会人ドラフト希望枠
澤村拓一 '10年1位
宮國椋丞 '10年2位
小山雄輝 '10年4位
高木京介 '11年4位
田原誠次 '11年7位
[註]統一ドラフトになった'08年以降の順位は「位」、それ以前は「巡」で区別した
以上は過去10年間のドラフトで指名され、今年の優勝に貢献した選手と、その指名順位である。このうち上位2番目までに指名された選手は8人。10年間で上位指名される選手は20人だから主力になる確率は4割。これは非常に高い数字である。
他球団の主力をかき集めても、「育成の巨人」は健在。
長嶋茂雄監督の第2期政権までは「他球団のエース、4番打者を掻き集めた金満球団」と批判された。今年も杉内俊哉、ホールトン(ともにソフトバンク)、村田修一(横浜)と他球団の主力選手を獲得しているが、杉内、ホールトンの9月21日現在の成績は合計23勝9敗、全勝利数に占める割合は28パーセントである。十分な働きだが、依存していると言われるほど高い数字ではない。
打者の村田に関しては9月21日現在、打率.258(リーグ15位)、本塁打11、打点55と絶好調時には程遠く、優勝を決めたヤクルト戦は6番を打っていた。個人的には、大田泰示を早い段階で抜擢したほうが将来的に見てもよかったと思う。
昨年オフの大補強で「育成の巨人」が「金満体質」に逆戻りした感があったが、清武英利・前GMと原辰徳監督が二人三脚で築いた育成路線がいまだ健在だったことを今年の巨人は他球団に思い知らせたと言っていい。