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断トツ1位の失策数は打撃で挽回を!
悩める広島・堂林翔太に必要なこと。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2012/08/22 11:35
19日の敗戦の翌日、練習時に野村監督からチームメイトの前で激しい叱責を受けた堂林は、「(自分のせいで負けたという)個人としての借金もありますので。死ぬ気で取り返します」と誓った。
高卒3年目の選手としては広島史上3人目となる2ケタ本塁打をマークするなど、今季の堂林翔太はレギュラー1年目とは思えないほどの活躍を見せている。
その一方で、若手ゆえの粗さも目立つ。
言うまでもなく、それは守備だ。
中学時代こそ内野の経験はあるものの、本格的にサードを守るのはプロに入ってからだという。だとしても、両リーグ断トツの26失策(数字はすべて8月21日現在)は多すぎる――。そんな声が常に聞こえてくる。
堂林自身、失策の多さを周囲から指摘されていることは当然、自覚している。だからこそ、オールスター期間中にゴールデングラブ賞を9度受賞した名手・宮本慎也(ヤクルト)にスローイングのコツを教わり、定期的に特守を行うなど課題克服に余念がない。チーム初のクライマックスシリーズ進出を賭け熾烈な3位争いを繰り広げている今、たったひとつの失策が命取りになるのだと、堂林本人も理解している何よりの証左といえるだろう。
苦手の守備が、堂林の打撃にまで悪影響を与え始めている!?
ただ、最近の堂林を見ていると、守備を意識するあまり最大の持ち味である打撃にも悪影響を及ぼしているのではないか。
8月19日の巨人戦は、まさにそれがクッキリと表れていたゲームだった。
初回に放ったレフト前のタイムリーは、堂林らしい迷いのないスイングから生まれたものだった。ところが5回、自身の2失策がきっかけで同点に追いつかれてしまう。
これが彼の調子を狂わせた。8回、2死満塁と勝ち越しの絶好の場面でど真ん中のスライダーを打ち損じライトフライ。汚名返上の機会を生かすことはできず、チームもサヨナラ負けと後味の悪い試合となった。
「ふたつとも打ち取っていた打球だったからね。あのミスで流れが変わったかな。こちらも期待して使っているのだから、取り返してもらわないと」
この野村謙二郎監督の苦言に、堂林は「(敗戦は)僕のミスです」と言葉を絞り出すのが精いっぱいだった。翌日には早速、「昨日はお前で負けた」と活を入れられ、指揮官直々のノックを受けることとなった。
ノックを数多く受けることは悪いことではない。捕球姿勢にスローイング。様々なフィールディングは何度もボールを処理することで身に付けていくものだ。