なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
ブラジル撃破で証明した守備の進化。
なでしこ悲願のメダルへ見えた光明。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byNaoki Ogura/JMPA
posted2012/08/04 19:00
FWの大儀見(写真右)、大野に駆け寄るDFの熊谷(左端)や岩清水(左から2人目)。先制弾を決めた大儀見は「DF陣が苦しい時間帯を防いでくれた」と感謝の気持ちを表した。
およそ勝負事というものは、明白な必然性がない限り、余計な動きを見せた方が負ける。
結果論の誹りを受けることを承知で言うが、ブラジルが日本戦を迎えるにあたり4バックに再変更した時点で、自身の戦い方に迷いを持っていることを敵に白状してしまったようなものだった。
準々決勝前の展望記事にも書いたが、昨年の女子W杯までのブラジルは、スイーパーを一人余らせたマンツーマンの3バックディフェンスだった。いかにも時代に取り残された戦術で穴も多かったが、彼女たちにしてみれば慣れた守り方だったし、その戦術でアテネ、北京と2大会連続の五輪銀メダルを獲得してもいた。
だが現バルセロス監督がW杯後に監督へ返り咲くと、他国に倣って4バックのラインディフェンスを導入した。が、付け焼刃はそう簡単には身につかないということか、今年に入ってからの親善試合では日本やカナダに敗れ、たとえ勝った試合でも、格下の相手に失点を喫したりしていた。
そこでバルセロスは今五輪直前になって4バックを捨て、グループリーグでは再び3バックに戻していたのである。
不慣れな4バックを採用して自滅したブラジル。
ところが日本戦でのブラジルの最終ラインは、なんと4バックだった。
グループリーグ最終戦のイングランドとの試合に敗れたことが、尾を引いていたのかもしれない。あるいは、4月の日本との親善試合で近賀ゆかりに右サイドを深くえぐられ、4失点目のアシストを許した場面が記憶から消えず、両サイドの守備を強化しなければと思い悩んだ末の一手だったのかもしれない。
しかし、負けたら終わりのトーナメント戦でいきなり不慣れな、しかも強豪相手に十全に機能した試しがない4バックにするのは、あまりにリスクが大きすぎた。
大儀見の1点目も、大野の2点目も、彼女たちの能力の高さによって生まれたゴールであると同時に、ブラジル守備陣の側に目を向ければ、最終ラインの連係の未熟さから招いた失点でもあった。
つまりは、監督の変心が招いた自滅だ。