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<“燃え尽き”を乗り越えて> マイケル・フェルプス 「水に戻ってきた8冠王者の最終章」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAFLO
posted2012/07/24 06:02
「やるべきことを全て達成した」と言えるレースを。
2011年7月、上海で行なわれた世界選手権では、100mと200mバタフライとリレー2種目で金メダルを獲得したが、200m自由形、200m個人メドレーではライバルのライアン・ロクテに敗れた。負けるのは悔しいけれど、だから「楽しくない」とは考えない。むしろ敗北を受け入れて、それでも水泳を楽しんでいる自分自身を悪くないと思っている。
北京の時の自分を超えなければならないと思いながら、苦しんだ時期をこう語る。
「確かに、あの時はきつかったけど、自分にとって正しいことをやっていたと思うんだ。自分のキャリアを考え直すためにも必要な時間だった。我慢の時期だったんだと思う」
すでにロンドン後の引退を発表したフェルプスに、五輪での具体的な目標を問うと、悪戯っぽい表情を浮かべ「秘密」と笑う。
北京の活躍で五輪の金メダル獲得数世界歴代1位になった。ロンドンではおそらく、1950年代後半から活躍した旧ソ連の体操選手、ラリサ・ラチニナの持つ五輪総メダル数18超えを目標にする。残すはメダル3つだ。
「水から出る時に『やるべきことは全て達成した』、そう言って終わりたいんだ」
水の怪物の最終章は、6月25日の五輪選考会で幕を開ける。
この記事の発表後、五輪代表選考会を兼ねた全米選手権に出場したフェルプスは、100m、200mバタフライ、200m自由形で1位フィニッシュ。しかし、200m自由形の五輪出場は辞退。個人種目は100m、200mのバタフライと、200m、400mの個人メドレーの4種目に絞ることとなった。