リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
ビラノバ監督と正式契約したバルサ。
新たな戦術、選手起用はあるのか?
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2012/06/30 08:01
ユーロ準々決勝まで全試合フル出場を続けるアルベロア。昨季レアルでも26試合先発とスタメン右SBとしてコンスタントに活躍した。
90分間走り続けて敵陣をかき回すアウベスがお手本に。
お手本はここ4シーズン、バルサでレギュラーの座を守ってきたアウベスだ。
味方がボールを持つと彼はすぐさま敵陣内まで前進する。そして積極的にボールをもらって敵の警戒心を掻き立て、中央を固める相手のディフェンスラインを横に広げることに努める。
常にサイドに張り出している選手が1列目にいるならそこまですることはないが、いずれにせよ、こうした戦術的な動きをする者がいないと、バルサやスペイン代表のような遅攻ではなかなか得点できない。アルベロアも前には出て行くが、その後はパスワークの中継点になるだけで、敵ディフェンダーを脅かしてはいない。
余談になるが、だからバルサのカンテラは数年前にサイドバックの育成方針を変えている。アルベロアのような守備力を特長とするタイプではなく、長い距離を疲れ知らずで走り、パスを受けては優れた技術をもってマーカーをかわし、敵陣深くまで臆することなく入っていくことができる選手を育てるようになっている。
初戦のイタリア戦直後だったか、この夏Bチームからトップチームに上がる五輪代表候補モントーヤの方が「アルベロアよりマシ」とつぶやいたバルサ関係者がいたが、贔屓の戯れ言ではなく、客観的にいって一理あるのだ。しかし、そんなカンテラにも左サイドバックの即戦力はいない。
バレンシアの左SBジョルディ・アルバを一本釣り。
そこでバルサはバレンシアと代表の左SBジョルディ・アルバに目を付けた。プレイスタイルとの相性はユーロで確認されたとおり問題なし。もともと中盤で攻撃を司る選手だったため、バルサ好みのテクニックを持っている上、周りとの連係に長けている。ユース世代までバルサのカンテラにいたという事実も、チームへの早い適応が計算できるという点で、評価を上げたことだろう。
「ユーロで活躍されて値段が上がったら困る」と、バルサはバレンシアとの交渉を大会開幕前にまとめる気でいたが、これを書いている時点で移籍は決まっていない。大きな債務を抱える両クラブだけに、移籍金の額がなかなか折り合わないようだ。それでもバルサは左サイドバックはアルバ一本に絞っているので、決定は時間の問題だと思われる。