ピッチ内外で以前とは違う一面を見せた宇佐美。

　名門バイエルンに加入するも、1年目のシーズンは出場機会に恵まれず苦労したせいか、表情や言葉から青さが抜けた。ピッチ上でも前のスペースに抜けて行く動きを見せたり、オランダ戦では自ら決めるチャンスがありながら指宿にパスを出すなど、以前の宇佐美とは違うプレーを披露した。

「大人のプレー？　なんやろ（苦笑）。自分で決めても良かったし、たぶん打てば入ったと思う。でもイブくん（指宿）も上がって来ていたし（得点の）可能性が高い方がええかなって。チームのためにということです」

　プレー以外でも宇佐美は、積極的に選手と関わった。食事中に扇原や比嘉祐介ら、いろんな選手とコミュニケーションを深めた。そうして、チームに少しでも溶け込み、長いブランクを少しでも埋めようとした。それは、五輪への強い想いがあるからだった。

「五輪は、めっちゃ出たい。ほんまは予選も行きたかったけど、バイエルンが五輪に行くのを良く思っていなかった。今回もトゥーロンがあるのは聞いていたんで、『どうなの』ってチームに聞いたら『何も聞いてない』って言われた。で、『俺は行くけど問題ないよね』って話をして、ようやく行かせてもらった。これが最後のチャンスやし、今回、プレー出来て、ほんまに良かったです」

　宇佐美は少し弾む声で、そう言った。

海外組のような迫力で評価が右肩上がりの齋藤。

　その宇佐美の活躍に刺激を受け、オランダ戦、エジプト戦でアグレッシブなプレーを見せたのが齋藤だった。バイタルエリアでボールを持つとドリブルで仕掛け、オランダ戦では起死回生の同点ゴールを決めた。その姿は、海外組のような迫力があった。

「ゴールはたまたまですけど、積極的に仕掛けるのが自分のプレーですから。愛媛でも自分の良さを出そうというのをすごく意識していたし、それを継続してマリノスでもやれている。だから、代表にも呼ばれたと思うんです。でも、宇佐美とか、海外組の選手は一人でボールを持てるし、何がなんでも前に行くという意識が強い。自分らしさを出さないと海外では生き残れないからだと思うけど、それは刺激になりますね」

　齋藤は、昨年、愛媛で14ゴールを上げ、「愛媛のメッシ」と呼ばれた。今季、マリノスに復帰、最終予選のマレーシア戦では初ゴールも決めた。「僕は今年からチームに入ったようなもの」と言うように、実績は足りないが、ここに来て海外組と息の合ったところを見せるなど、評価は右肩上がりだ。

「僕は、彼らと一緒にプレーするのは初めてなんですよ。でも、同じ感覚を共有しているみたいで、プレーしてて楽しいですね。五輪は……絶対に生き残りたいって感じじゃないです。もちろん出たいですけど、競っているのは、すごくいい選手ばかりだし、自分が出たいと言ってもどうにもならないじゃないですか。今はオランダ戦のように結果を残し、マリノスをひとつでも上の順位に上げて、最終的に五輪に行ければって感じです」

　五輪に対して慎重な姿勢を崩さない齋藤だが、積極的なプレーは彼の本心を代弁しているようだった。

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