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<ナンバーW杯傑作選/'02年6月掲載> 波瀾のプロローグ。 ~選手発表からW杯開幕まで密着!~ 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2010/05/18 10:30

<ナンバーW杯傑作選/'02年6月掲載> 波瀾のプロローグ。 ~選手発表からW杯開幕まで密着!~<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

中山からいつもの軽快でテンポの良い口調が消えた。

 秋田と一緒にJの歴史を積み重ねてきた中山は、いつもの軽快でテンポの良い口調は消え、ズシリと何かを背負ったような魂のこもった言葉で心境を語った。ジュビロ磐田では名波、高原、FWでは久保竜彦、山下芳輝らが落選。その真摯な姿勢からは、そういった選手たちに対する気遣いと選出された責任の重さがヒシヒシと感じられた。落選した選手は決して納得はしていないだろうが、中山の姿勢に随分救われたのではないだろうか。

 高原も「俺が落ちたのは悔しいけど、中山さんが入ったのはすごく嬉しかった。中山さんの精神力とか献身的な動きは、絶対にチームに必要だと思っていたからね」と、まるで自分の事のように喜んでいた。4年前、フランス大会のメンバー発表後、山口素弘は緊張した表情で、「これでようやくチームがまとまって戦うムードに入れる。選ばれた人間だけじゃなく、ここで帰国する選手、日本にいる選手、そしてみんなのために戦う」と語った。中山の緊張した顔が、4年前の山口の顔とダブった。

チームを揺るがした指揮官の身勝手な行為。

 ここから初戦の6月4日までは親善試合をひとつこなし、あとはコンディションを調整するだけのはずだった。ところがこの短期間にチームを揺るがす事件が起こるのである。

 23名が初集合する代表合宿は、5月21日、磐田でスタートした。冒頭、17日の選手発表日をベルギー戦の視察のために拒否した指揮官は、この日の記者会見でも質疑に応じず、約200人の報道陣の前で2分間、声明を読み上げるだけで終了した。

 この日の会見は質疑応答有りという話だったがベルギー戦の視察後、指揮官から「キャンセルしたい」という連絡があり、強化推進本部が説得してなんとか会見だけでも行なうようにしたという。毎度のことだが、自分の地位を利用した身勝手な行為は人間的な信頼と信用を失うばかりだ。

 25日、ワールドカップ前の最後の親善試合スウェーデン戦が国立で行なわれたが1-1の引き分け。前半は内容に乏しく、後半はオールスター戦のように選手が目まぐるしく交代し、勝敗を度外視した内容になった。

【次ページ】 崩壊するフラット3、ついに森岡隆三が戻ってきた。

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