EURO大戦2012BACK NUMBER
「負けない戦い方」で自滅する強豪国。
混沌としてきたユーロ決勝T進出争い。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/06/15 12:50
ドイツに負けて悪夢の2連敗を喫したオランダ代表。スナイデルは「今の気持ちは、ただただ不信感があるのみだ。ピッチの上での戦い方を全面的に変える必要があるよ」と悲痛なコメント。
開幕から一週間、魅力的な試合が繰り広げられているユーロ2012だが、一方で、がっかりなサプライズもあった。オランダやポルトガル、イングランド、フランスといった十分な戦力を持ったチームが、“勝利”より“負けないこと”を重視する試合をしていたことだ。
中でも見込み違いだったのはオランダである。
優れた技術と巧みな組み立てで多彩なオフェンスプレイを見せてくれると思いきや、中盤でもたつく攻撃は薄っぺらで鮮やかな連係もなし。ファンマルバイク監督が堅い守備を優先し、ファンボメルとデヨングを中盤の底に並べたせいである。大会随一のアタッカーたちを抱えているのに、これぞ宝の持ち腐れだ。
そのオランダとグループステージ最終節で対戦するポルトガルも、度を過ぎた慎重さをもって自らの首を絞めた感があった。
“死のグループ”に入ってしまったことがそうさせたのかもしれないが、前線の選手に頼る単調な攻撃に威力はなく、せっかくのクリスティアーノ・ロナウドを活かせてもいない。ベローソ、モウチーニョ、メイレレスががっちり守る中盤はなるほど堅いが、ポルトガルに期待されるのはもう少し華やかなサッカーだろう。
イングランドとフランスが醸し出した“がっかり”感。
他方、イングランドとフランスはグループDの第1節で対戦した際、1-1の均衡をなんとしても破るという姿勢をともに見せなかった。
互いをグループ内最強の敵とみなし、勝ち抜けに向けてポイント確保を選んだのであれば拙い手ではないが、グループCのスペインとイタリアが同様の状況にあっても最後まで勝利を目指して戦ったことを考えると、失望を禁じ得ない。
しかし、こんな“がっかり”が全体を盛り上げるアクセントになるのが、こうした大会の面白いところでもある。
オランダ、ポルトガルのグループBは、おかげでどこが勝ち抜けるのかわからなくなった。