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Jクラブは選手の海外移籍で
正当な額を手にしているのか。
~『サッカー選手の正しい売り方』~
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph bySports Graphic Number
posted2012/05/08 06:00
『サッカー選手の正しい売り方 移籍ビジネスで儲ける欧州のクラブ、 儲けられない日本のクラブ』 小澤一郎著 KANZEN 1600円+税
才能あるタレントを“いかに出すか”が問われる時代へ。
本書でも紹介されているが、鹿島アントラーズは内田篤人をシャルケに移籍させた際、1億5000万円の移籍金を受け取った。FC東京は長友佑都をチェゼーナに移籍させ、インテルへと渡ったことで2億円近い金額を手にしたとされる。
この2例に共通しているのは内田、長友の帰属意識。彼らには自分が育ったクラブに移籍金をもたらしたいという思いが強かった。クラブ側が選手のステップアップを一緒になって考え、契約においても信頼関係を構築していったからである。
もはや才能あるタレントを国内にとどめておく時代ではなくなった以上、“いかに出すか”が問われる。Jクラブは海外の情報という「外」に目を向けると同時に、選手の帰属意識という「内」にも比重を置く必要がある。
海外クラブと交渉で戦うためにも、Jクラブ、そしてJリーグは今こそ危機意識を持って行動するときである。