Jリーグ観察記BACK NUMBER
観客動員数が伸び悩むJクラブ。
ブンデスリーガに学ぶミラクル経営術。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2010/05/04 08:00
中村俊輔のJリーグ復帰戦となった第2節の湘南ベルマーレ戦。3万2228人もの観客が日産スタジアムに詰め掛けた
Jリーグには無い奇抜な発想でチケットを売りさばく。
まずブンデスリーガの特徴としてよく言われるのは、チケットの安さだ。
'07-'08シーズンのデータによると、ブンデスリーガの平均チケット価格は19.47ユーロ(約2400円)。イングランド51ユーロ(約6400円)、スペイン33ユーロ(約4100円)に比べて、かなり手頃である。Jリーグのチケットはプレミアリーグのように高いわけではないが、常に価格設定が適切かをチェックする必要がある。すでにJリーグでも取り入れているクラブも少なくないが、ドイツでは相手によってチケット価格が変わるのが一般的だ。
「オマケをつける」というやり方もある。
ドイツ3部のオッフェンバッハは、今季ドイツ杯の1回戦で隣町のアイントラハト・フランクフルトと対戦することになった。いわゆるダービーだ。このドル箱カードを利用しない手はない。クラブは「シーズンチケット購入者には、ドイツ杯1回戦のチケットの優先購入権を与える」というキャンペーンを行った。その結果、前年以上のシーズンチケットを販売することができた。
日本の場合、国内リーグ以外の人気カードは存在しないので、単純には応用できないが手はあるはずだ。たとえば、毎週、シーズンチケット保有者に「非公開練習を見学する権利」を限定30人にプレゼントする、というのはどうだろう。まあ、監督が許すかは分からないが……。非公開テストマッチの見学権をオマケにしてもいい。
「会長選挙の投票権」までがチケットのオマケに!
そして何と言っても、ドイツのクラブにおける最大のオマケは、「会長選挙の投票権」だ。シーズンチケットを買ってクラブ会員になれば、年に1度のクラブ総会に出席でき、会長や理事の選挙で投票することができる。
社会人リーグから移行した経緯を考えると、Jリーグに投票を導入するのは難しいかもしれない。だが、会員に何かしらの方法でクラブの決定にかかわる投票権を与えると、さらにシーズンチケット購入者を増やせるのではないだろうか。
「全国展開するチェーン店と提携する」という手もオススメだ。
ブンデスリーガはガソリンスタンドの『Aral』と提携し、全国で優勝予想キャンペーンを行っている。ガソリンスタンドでは“マイスターシャーレ”(優勝皿)の金属性レプリカが販売され、それが順位表にもなっており、ユニフォームの形をしたマグネットを貼ることができる。コレクターの収集魂をくすぐる商品だ。
Jリーグは歴史の浅さを逆手にとって斬新な経営を目指せ!
地方のそれぞれのクラブが地元密着で営業努力をするだけでなく、リーグ自体が全国共通のキャンペーンを、誰もが身近な場所で行うことで、新たなサポーターの獲得を期待できる。ブンデスリーガは「あらゆる世代のサポーターを取り込むことが大事」と考え、国民の日々の生活にどんどん入り込んで、認知度を高める努力をしている。
Jリーグは歴史の浅さが、ハンデになっている部分はある。しかし、見方を変えれば、伝統にとらわれず斬新なことにチャレンジできるということでもある。Jリーグからヨーロッパのクラブが真似したくなるような、斬新で刺激的なマーケティング手法が生まれ、観客動員数アップに繋がることを期待したい。