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第84回センバツを完全総括!
大阪桐蔭、優勝への階段。
~小関版ベストナインも発表!~
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKyodo News
posted2012/04/06 10:30
悲願のセンバツ初優勝を果たした大阪桐蔭。マウンド上でガッツポーズを作ったエース・藤浪を中心に歓喜の輪をつくった。
光星学院対愛工大名電は、昨秋対決の再現に!
光星学院は比較的楽なブロックに入った。
1回戦で当たった北照を城間竜兵(投手&二塁手・右投右打・171/75)が完封、2回戦で当たった近江は金沢湧紀(右投右打・175/80)が9回2死まで1失点に抑え、という具合にWエースが見事に機能して準々決勝に進出した。
光星学院の決勝進出の弾みになったのは準々決勝の愛工大名電戦だろう。愛工大名電は機動力を駆使した試合運び、左腕エース・濱田達郎(左投左打・183/88)を中心にしたディフェンスの堅さが今大会屈指の評価を受け、優勝候補の筆頭に挙げる人もいた。
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7回終了した時点で2対2の同点という展開は、7回終了時点で5対5の同点だった明治神宮大会の決勝に酷似している。明治神宮大会の光星学院は先発城間が3回まで投げ、4回以降金沢が継投して愛工大名電打線を封じ込めた。このセンバツでは先発城間が5回2死まで投げ、それ以降を金沢がリリーフ。それに対して愛工大名電は濱田が先発完投している。
“親子ゲーム”と言えるほど酷似した明治神宮大会では光星学院の北條史也(遊撃手・右投右打・178/73)の三塁打が決勝打になり、このセンバツの勝敗を決めた一打は6番・大杉諒暢(三塁手・右投左打・175/70)が放ったランニング3ランホームラン。
展開から投手起用から何から何までよく似た一戦であれば、結末も同じになるのは道理である。言い方を変えれば、光星学院は明治神宮大会の戦い方をよく分析し、勝利へと続く流れを巧妙に作り、その流れにうまく乗った。愛工大名電は、明治神宮大会で苦労した110キロ台のスライダーのようなカーブのような緩い変化球をこのセンバツ大会でも攻略しきれなかった。それが敗因の1つと言っていいだろう。
浦和学院に絶体絶命まで追い込まれた大阪桐蔭を救ったのは?
激戦続きだった大阪桐蔭にとって、まさに絶体絶命の瀬戸際まで追い込まれたのが準々決勝の浦和学院戦である。9回表を迎えたときのスコアは1対2。
浦和学院は1対0でリードした6回、それまで好投していた山口瑠偉(2年・右投左打・180/80)を降板させ、エース佐藤拓也(右投左打・171/72)をリリーフに送っている。打たれた投手を代える監督はたくさんいるが、打たれていない投手を代える監督は少ない。ここに勝利を渇望する森士監督の執念を見る思いがした。
この森監督の野望を打ち砕いたのは大阪桐蔭の不振組2人である。9回先頭の森友哉(捕手・右投左打・169/80)が右前打を放つが二進を焦り憤死。普通のチームならここで気力が萎えるが、大阪桐蔭は奮い立った。
この前の打席まで通算6打数0安打の4番・小池裕也(一塁手・右投右打・183/77)が四球で歩き、5番・安井洸貴(左翼手・右投左打・175/70)の二塁打で同点、そして2死後、ここまで通算9打数0安打の7番・白水健太(中堅手・右投両打・173/75)が中前打を放ち、二塁走者の安井を迎え入れて逆転する。
総評風に解説すると、小池は準決勝まで打率1割と不振を極めたが西谷浩一監督が4番で起用し続け、決勝の光星学院戦で本塁打、二塁打、単打を放ち復活、白水も準決勝まで打率.143ながらスタメン出場を続け、決勝で4打数3安打と大暴れし、優勝に大きく貢献する。その目覚めの萌芽が、この浦和学院戦でわずかに見える。決勝につながる一戦という見方をすれば、この浦和学院戦は1回戦の花巻東戦より重要な試合だったと言える。