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電車で縦断できない東京西部を行く。
自転車らしい発見のある不思議旅。 

text by

疋田智

疋田智Satoshi Hikita

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photograph bySatoshi Hikita

posted2012/03/27 06:00

電車で縦断できない東京西部を行く。自転車らしい発見のある不思議旅。<Number Web> photograph by Satoshi Hikita

東京西部を縦に走る間、たくさんの鉄道路線をまたぐことになる。写真は世田谷線のピカピカの新型車両。こういう鉄道と自転車がもっと気軽にリンクするようになれば、都市交通網はますます快適になるに違いない。

 山手線の西側の街々を縦に自転車で行ってみようと思うのだ。

 誰もがお気づきの通り、東京西部の文化は横ラインで規定されている。とりもなおさず鉄道路線のテイストがモノを言っているわけだ。西武線にはあのライオンマークの西武っぽさがあるし、JR中央線には有名な中央線カルチャーってヤツがある。

 たとえば阿佐ヶ谷と高円寺は近い。物理的に近いだけじゃなくてどこか共通点がある。荻窪も、吉祥寺も、中野も、どこか醸し出す雰囲気に共通点がある。市や区は違うのに。何か「中央線っぽい」。

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 しかしながら、縦に関していうと、随分とカルチャーが違ったりする。同じ区内にあってもそうで、直線距離ではさほど隔てられているとは思えないのに、何だか町同士が背中向けあっているという感じ。おたがいに背中向けあって、では、どこを向いているかというと、それぞれの最寄りの駅の方を向いているのだ。

 それが東京西部の特色だ。鉄道が通っていないというのは、かくも東京人の行動様式にものをいう。

 ということで、今回はそれを自転車でつないでみようと思うのだ。

 後で書くけど、この縦ライン、いくつもの路線を越え、いくつものカルチャーを越えていくぞ。

高度経済成長期、光り輝いていた都内屈指の巨大団地。

 最初は東武東上線の下赤塚駅からスタート。

 ……と思ったら、すぐに東京メトロ「地下鉄赤塚」に着く。「すぐ」どころか、ペダルを10回も踏んだらもう駅だ。ま、駅名は違うものの、ここは乗換駅でもあるからね。

 地下鉄有楽町線「地下鉄赤塚」。あれ? ここってかつては「営団赤塚」って言わなかったっけ。

 と思ったら、駅名を変更してたのね。

 かつて、地下鉄マークは「S」を横長にしたものだった。それが現在は「M」の真ん中がぐるんと丸まったものだ。帝都高速度交通営団、略称「営団」がなくなって、民間企業・東京メトロになった。だから、それにともなって「地下鉄赤塚」になったのだ。

 なにゆえここからスタートかというと、ここのすぐ南に都内屈指の巨大団地、光が丘があるからだ。このシリーズ、ちょっと前からなぜか“団地”にこだわっているのである。

 板橋区赤塚から、練馬区光が丘に入っていくと、おー、最初に迎えてくれるのが、かなり大規模な桜並木だ。

 冬がトンデモなく長かったから、今年は桜は遅くなるそうな。でも、枝を見てみたら、堅そうなつぼみが枝についている。長い冬の末にだって、また春がめぐってくる。

 光が丘というニュータウンは、中心部に広大な緑地を配した「都内で最も新しい“巨大”団地」である。

 最初の入居が昭和50年代で、実に平成4年まで巨大化し続けた。私の世代では、父母が「光が丘みたいなところに住めたらいいわねぇ」と言っていた。

 当時、光が丘は似たようなマンションと較べて「まずまず高級な割には、値段はそこそこリーズナブル」というのがウリで、サラリーマンたちの人気を集めたものだ。現実には抽選の倍率が高すぎて、なかなか入れなかったんだけど。

光が丘の老人たち。

 公園の真ん中に茶店のようなものがある。それを取り巻くベンチ群には、まだまだ元気そうなジジババが多数、憩いの時間(たぶん)を過ごしている。

 必然と言うべきか私の父母とちょうど同じ世代だ。

 団塊の世代のちょっと上。団地というものは同じ世代が集まりがちだから、コミュニティはこのようにして老いていく。

 ただし、この光が丘、まんざら活気がないわけじゃない。それどころか数ある団地の中で、今でも若々しさが残っているといえる。

 ベビーカーを押すママさんも多数いるし、学校帰りの小中学生も多い。マンション自体がまだ新しいというのもあるが、何よりも公園を中心にした街の造りが今でも魅力的だ。大江戸線の全線開通によって、都心へのアクセスもものすごく便利になった。

 TOKYOルート24でこれまでめぐった数々の団地に較べて街の造りが現代的だ。団地設計も常に進歩しているのだろう。

【次ページ】 練馬大根の本場だから……。

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