鳴り物入りで入団した二人の競争意識が覚醒を促す。

　連日のようにブルペンに入るなど、首脳陣へアピールする一方で、投球の際の体重移動を細かくチェックしながらネットスローを何度も繰り返す。丹念に自分の形を作り上げている大石は、今季の意気込みをこう話す。

「焦りはあるけど、今は投げて感覚を掴むしかないんで。今年は周りに流されずに自分のペースでやっていこうと思います」

　キャンプ序盤で顕著に見られたのは、菊池と大石がほぼ同じメニューをこなしていることだった。

　ブルペンでは並んで投球し、3日にはふたり揃ってフリー打撃に登板した。予定では、第3クールの12日の紅白戦で「先発対決」が実現するという。

　大物の覚醒を促すために、渡辺監督はあえて競わせることを選んだ。

「まだ数日しか見ていないから、あんまり書かないでよ」と指揮官は報道陣にくぎを刺す。しかし、言葉は正直だ。「ローテーションに入ってくるだろうな、という想いで見ているよ」と、今季の先発陣の展望を嬉しそうに話してくれた。

　3年目の菊池と2年目の大石。プロでのキャリアに違いはある。だが、昨年一軍マウンドを経験した高卒投手と「即戦力」と呼ばれた大卒投手が今季求められるのは明確な結果である。ともに立場は同じなのだ。

　チームの期待を裏切らないために──。2012年は、菊池と大石にとって大事な1年となる。