野球クロスロードBACK NUMBER
阪神・歳内宏明と楽天・田中将大。
共通する投手としての“道と才能”。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/01/31 10:31
鳴尾浜球場で新人たちと一緒に合同自主トレに励む歳内宏明。昨年末に右足首をねん挫して、合流が遅れたが、一気に巻き返す勢いで激しく練習をこなしていた
プロで通用するために不可欠な球威と変化球の精度。
田中はプロ入り後、変化球の精度が増し、速球にも磨きがかかった。その結果、昨年、沢村賞という投手の最高栄誉を手にした。
プロでの実績がない歳内の将来は未知数だ。期待する声は多い。その一方で、「スプリット一辺倒では通用しないのでは?」という懸念の声も聞こえる。このような批評を、斎藤監督はやんわりと否定する。
「スプリットだけじゃ通用しないなんて分かっていますよ。プロでは速球も磨かないと結果を出せないことは重々理解している。高校野球は負けたら終わりの世界。勝つための最善の手段としてスプリットが多くなっただけのことです」
歳内にしても、「プロでは速球を中心に変化球も、もっと磨いていかないと通用しないことは分かっています」と己をしっかり俯瞰している。
確立された、「関西から東北・北海道を経てプロ」という新しいルート。
近年では、田中、そしてダルビッシュ有(レンジャーズ)から分かるように、関西出身で東北・北海道の高校を経由しプロへ進み、日本を代表する投手へと成長するケースが目立つ。
彼らは、高校での経験をプロで生かしつつも、野球技術の向上や体作りにも熱心に励み、圧倒的な結果を残している。
共通する部分が多い歳内も、現時点で課題とされているものを丹念に克服していけば、いずれは2人のように……という期待を抱かせてくれる。だから比較されるのだ。
プロでの第一目標を「開幕一軍」と掲げた歳内ではあったが、年始の新人合同自主トレは年末に右足を捻挫し出遅れた。おそらく、春季キャンプは二軍スタートとなるだろう。しかし、開幕まで約2カ月もある。チャンスはこれからいくらでも与えられるはずだ。
偉大なる先輩と比較され、プレッシャーが全くないわけではないだろう。タイプが似ているからといって、プロで結果を残せる保証はどこにもない。
だが、あえて「田中将大」と口にした歳内なら、いずれ周りの評価以上のことをやってのける。だからこそ、焦らず、ひたむきにプロ野球人生を歩んでいってほしい。