Jリーグ観察記BACK NUMBER
Jから去りゆく外国人監督たち。
新たな監督選びに求めたい“色”。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAtushi Hashimoto
posted2011/11/19 08:02
記者会見で「チームと離れるのが本当に辛い」と涙を流したセレッソのクルピ監督。クラブ側は6季目の続投を要請したが、単身赴任生活が5年に及んだことで、母国ブラジルにいる家族の気持ちに応えることにしたという。球団社長の藤田信良社長は「監督が作り上げたセレッソのサッカーと育成を継続したい」とコメントした
長期的に優れた外国人監督と契約した優秀なフロント陣。
ブラジル流のプロフェッショナリズムが、香川真司(ドルトムント)、乾貴士(ボーフム)、清武弘嗣ら若手を、次々に魅力的なアタッカーへと育て上げていったのだろう。
一般的に外国人監督との契約の場合、年俸は手取り額で提示され、チーム側が税金を負担する。ただでさえ日本人監督よりも年俸の相場が高いうえに、さらに出費がかさむということだ。そういうコストを惜しまず、長期的に優れた外国人監督と契約してきた両チームのフロントは評価されるべきだろう。
しかし、だからと言って、「もっと外国から監督を連れてくるべき」と主張したいわけではない。
監督選びに最も重要なのは、国籍ではない。選ばれる側の監督が「何を武器にしているのか」という特徴と、選ぶ側のクラブが「監督に何をさせたいか」というビジョンの両方が、きちんと“色”として見えていることだ。
クラブは監督に課する目標を、取捨選択しなければならない。
クラブが達成したい目標には、若手を育てる「育成」、優勝や残留などの「結果」、攻撃的なサッカーをする「スペクタクルさ」といったいろいろなものがある。だが、いきなりこのすべてを目標にするのは欲張りと言うもので、クラブはどこに限られた資源を投入するか、目標を取捨選択しなければいけない。さらに攻撃的、守備的という二者択一に留まらず、具体的なディティールまで踏み込んだ方が、どんなサッカーをするのかがより明確になる。
たとえば、「シーズン終了時に総失点は50でいいから、総得点は70に乗せる」とすれば、自ずと主導権を握ろうとするサッカーになるはずだ(ちなみに昨季、優勝した名古屋は54得点37失点で、2位のガンバ大阪は65得点44失点だった)。こういうスローガンを掲げれば、無名でもいいから新しい攻撃のアイデアを持った監督を抜擢するというリスクも負いやすいし、サポーターとしても、なぜ失点が減らないかより、なぜ得点が増えないかを見極めれば良いことになる。