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ランキング制導入の柔道界に波乱。
過酷な状況で精彩欠く選手たち。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2011/11/21 10:30
柔道女子重量級のホープで、世界ランク1位を独走する田知本愛。一人、健闘し、講道館杯全日本体重別選手権の女子78kg超級で初優勝を果たした
11月12、13日に、柔道の講道館杯全日本体重別選手権が、千葉市で行なわれた。
来年のロンドン五輪の日本代表を決める、第1次選考会を兼ねた大会である。ここから、来春の全日本選抜体重別選手権(重量級を除く)まで、代表をかけた争いが続くことになる。
そうした、重要な位置づけにあるはずの大会の結果は、思わぬ波乱が相次ぐものとなった。
日本代表として、多くの国際大会を戦ってきた選手たちが次々に敗れたのだ。とくに今年8月、パリで行なわれた世界選手権の日本代表で、今大会にエントリーした選手の不振は際立った。初日に男子100kg超級で上川大樹が初戦負けを喫したのを皮切りに、トーナメントの途中で敗れる選手もいた。
終わってみれば、世界選手権代表で優勝したのは、男女あわせて14階級中、女子78kg超級の田知本愛ただ一人にすぎなかった。
五輪出場枠を争う代表選手に課せられた過酷な日程。
しかしこの結果は、ある程度はやむをえない面もあるのではないか。むろん、日本代表であるにもかかわらず、簡単に敗れるのは問題かもしれない。ただ、それでもやむをえないのではないかと感じずにはいられない側面があるのだ。
日本代表選手たちの厳しいスケジュールという点だ。
以前も何度か、今日の柔道における選手のスケジュールの過酷さについて書いたことがある。
2009年、国際柔道連盟は、世界ランキング制を設けた。主要な国際大会の成績にポイントを付し、そのポイント数によってランキング化するのである。そしてランキングを、オリンピックの出場権とリンクさせた。男子は上位22名、女子は上位14名が出場資格を得るのである(別に大陸枠もある)。
ランキング制がスタートしたとき、「ランクを上げるために出場試合数が増えざるを得ないこのシステムはベテラン選手にとって過酷では」という声が国内の柔道界でも相次いだ。実際にはベテランにかぎらず、選手に厳しいスケジュールを強いることになった。今年の1月から10月を例にとっても、多くの日本代表選手は、6、7つの大会に出ざるを得なかった。最重量級を除き減量がある対人競技としてはハードと言わざるを得ない。