オフサイド・トリップBACK NUMBER
テベスの次は誰か? マンUとマンCを
完成させる「最後の更迭人事」。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byGetty Images
posted2011/11/20 08:02
「私の指揮下ではテベスは決してプレーしないだろう」と語ったマンチーニ監督。テベスの方は、マンチーニとチームの扱いに対して名誉棄損や契約義務違反で訴える準備があると言われている
アグエロに対する漫然としたプレーに疑問符が……。
マンCに2点目を奪われた直後、ルーニーは中盤から右サイドにパスを展開。あいにくボールはマンCの選手に奪われ、アグエロがドリブルで攻め上がる形になったが、すぐ側にいたルーニーは激しくチェイスするでもなく、漫然と並走するだけだったのである。
たしかにルーニーの場合は、気性の激しさが諸刃の剣となってきた。その点では冷静に対応したという見方もできるかもしれない。またアグエロを無理矢理にでも止めようとしなかった背景には、味方にマークを受け渡すという頭が働いていた可能性もある。(最終的にアグエロをファウルで止めたのはアンデルソンだった)。しかしこの種の振る舞いは、以前ならば目にすることのないものだった。
悪童の放出が新生マンUを完成させる最後のピース!?
ルーニーに変化が起きているふしは、他の部分でもうかがえる。たとえば昨季の公式戦におけるゴール数は16にとどまった。これは'04年にエバートンから移籍して以来、最低の数字である。'09ー'10シーズンに記録した34ゴールは例外だったにせよ、マンUのエースとして物足りない数字であることは言うまでもない。
くわえて昨季は、契約問題でも物議を醸している(ルーニーは契約更改を渋りマンCに行く素振りをみせた挙句、最終的には週給18万ポンドでサイン)。いくら「マンUこそ自分がいるべき場所だと確認できた」などと力説しても、ファーガソンやチームメイト、そして何よりサポーターに強い不信感を与えたのはたしかだ。
「契約の一件があるだけに、ウェインは是が非でも結果を出さなければならない」
マンU番の記者たちは口をそろえて指摘する。ましてや「執念の人」ファーガソンが、契約更改交渉で味わわされた屈辱を忘れるはずがない。しかも彼は「次のユナイテッド」作りを着々と進めているのである。
MFのクレバリーやFWウェルベックといった若手が「脱皮」を終えて一流選手に成長したとき、ルーニーに確固たる居場所はあるだろうか。
今季は比較的順調にゴールを挙げているとはいえ、新チームを完成させる「最後の一手」として、ファーガソンが肩たたきをするような日がくる可能性は誰にも否定できない。ある意味、今季のプレミアでマンCに遅れをとっていることは、ルーニーにとってラッキーだったともいえる。ファーガソンの構想から漏れたくないのであれば、彼は自分に追い風が吹いている間に、本当の輝きと信用を取り戻さなければならない。