日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
平壌でザックの無敗記録ストップ!
遠藤不在時の打開策、いまだ見えず。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKYODO
posted2011/11/16 12:15
北朝鮮代表のパク・ナムチョルが決勝のヘディングシュートを決めた瞬間。日本代表は、北朝鮮代表のフィジカルを前面に押し出した強い圧力を受け、為すすべもなく翻弄され続けた
チーム全体を落ち着かせつつ、自在に操る遠藤の能力。
「球離れが早く、ボールを持っても相手が待っているところに突っ込んでしまっていた。長谷部と細貝の2人のボランチのところからのパスが少なかったし、リズムを変えようと(前半途中から)中村が下がったら今度は前田と中盤の距離が空いてしまって、前田が一人で相手を背負う場面が増えてしまった。遠藤がいない影響なのか、ずるずると相手のペースに引き込まれるような感じでした。
こういうとき遠藤という選手は相手が食いつこうとする絶妙なポジションを取ってボールを受けるのがうまい。相手との距離が遠すぎれば食いついてこないし、近すぎればそのままボールを取られてしまう可能性も高くなる。絶妙なポジションで相手が動かざるを得ない状況をつくって、相手が近づいてきたら味方に預ける。相手を外してからまたリターンをもらって縦にクサビを入れるとか、そうやってチームに落ち着きを与えてコントロールできる。
細貝は守備に力を発揮する選手なので、中村がその役割を何とかやろうとしたのですが、周りもどう攻めるか理解していないとなかなか落ち着かせるのは難しい」
タジキスタン戦同様に競り負け、セカンドボールを拾われ続けた。
遠藤不在のチームがペースに変化を生み出せないもどかしい展開のなかで、後半5分に先制点を許してしまう。身長190cm近いパク・クァンリョンを目がけた徹底したロングボール攻撃の対処に苦しんでいたが、失点シーンもFKのロングボールに競り負けてゴールを許したものだった。
タジキスタン戦同様に、セカンドボールもことごとく拾われてしまった。ビルドアップする段階でミスをして何度もカウンターを受け、攻撃の歯車の狂いが守備に響いた形になった。ザッケローニは次の打開策として後半途中から内田篤人を投入して3-4-3に移行した。福西は指揮官の意図をこう解説する。
「孤立していた前田のところでボールを収めようとしても厳しく、サイドで起点をつくりたかったはず。そこをしつこくやっていけば、突破口になると思ったからでしょう。実際、右サイドハーフに入った内田はサイドで起点をつくって相手をうまく引き出しておいてから中央にパスを入れるなど、いいアクセントになっていました。しかし、最後のところまでは崩せなかった。それと3-4-3に踏み切ったもう一つは守備の側面。長いボールを入れてきたので、3バックの一枚にこぼれ球を拾わせようという狙いもあったと思う。サイドで押し込めるようになれば、ボールを奪われても相手がカウンターで走る距離は長くなる。
攻守両面を考えて一定の効果はあったように思います。ただ、まだ成熟させている段階のシステムなので、最後のところで相手を崩しきるところまではいかなかった」