F1ピットストップBACK NUMBER
トップ3と可夢偉の夢が疾駆する……。
日本GPの裏側で交錯した想いとは?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/10/11 12:00
ザウバーは、日本GPで投入した最新パーツがうまく機能したのだが……。「(韓国GPでは)鈴鹿で投入した空力アップデートによって競争力が発揮できると思う。ポイント争いができると確信している」とレース後にコメントした可夢偉
ベッテルはファクトリーの仲間へ感謝の言葉を捧げた。
想像以上に激戦のシーズンだったことを物語るのが、タイトルを獲得した日本GPでも、レッドブルは最新の空力パーツを投入していたことだ。
前戦シンガポールGPで使用した新型フロントウイングの翼端板部分を改良したスペシャルパーツを、チームはベッテルとウェバーに1つずつ用意した。
ところが開幕したばかりの金曜日のフリー走行でベッテルがクラッシュ。鈴鹿にはスペアパーツとしてシンガポールで使用したフロントウイングがあったため、それを使って走ることも可能だった。しかし、チームはクラッシュした直後にイギリスのファクトリーに連絡を入れ、韓国GPでのスペアパーツとして製作したばかりの新しい翼端板を日本に空輸させたのである。
その大変な作業を伴うバックアップがあったからこそ、タイトル確定後の記者会見でベッテルはこう言ったのである。
「チームの一人一人に心から感謝したい。サーキットで一緒にレースしているスタッフはもちろん、イギリス・ミルトン・キーンズのファクトリーで働いてくれている人たちもだ。毎日一生懸命仕事している彼らのおかげで、いま僕はこうして2連覇を達成することができたんだ」
大幅に進化したマシンを日本GPへ投入していたザウバー。
レッドブル以外にも、多くのチームが今回の日本GPに新しいパーツを投入していた。その中でも、もっとも大きな進化を遂げたマシンを持ち込んだのが、小林可夢偉が所属するザウバーだった。
マシンをアップデートしたばかりではない。
フロントウイングを2種類、リアウイングは3種類も持ち込んでいたザウバーは、初日のフリー走行をさまざまな組み合わせで走行し、データを収集。金曜日の夜はシーズン中、4回だけ許可されている時間外作業枠を使用して、深夜2時半まで秋冷えのガレージでセットアップを行っていた。
ハード面以外にも、ザウバーは日本GPに向けて見直したことがあった。それは指揮系統である。