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巨人打線を活性化させた男、
2番打者・藤村大介の真の価値とは? 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/08/23 10:30

巨人打線を活性化させた男、2番打者・藤村大介の真の価値とは?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

打率は2割5分に満たない藤村だが、自慢の俊足を生かして盗塁数は17でリーグトップを走る(8月22日現在)。二塁の守備でも好守が光る

けた外れの俊足を持つ藤村は「2番」にうってつけの選手。

 その考えからすると藤村は、巨人では数少ない2番打者の適性選手だと言える。

 藤村はベース一周13秒7、50メートル5秒8というけた外れの俊足を買われて、'07年の高校生ドラフトの1巡目で入団。今年の5月に初めて一軍に昇格した。5月13日の広島戦では「8番・二塁」で先発し初盗塁。翌14日の同カードで「2番」に起用されると初安打もマークして、以後20試合で「2番」を任された。

 ただ、この頃の巨人は打線がどん底だった。

 1番の坂本勇人内野手の出塁率が低く、2番打者にも1番と同じように、まず出塁という役割を求める打線を組まざるを得なかった。

 そこで藤村のバットが湿ると、亀井義行や高橋由伸など「ヒットを期待できる」(原監督)打者を2番に起用する、攻撃型オーダーを組むしかなくなっていったのだ。

打率が悪くても藤村を起用し続けた原監督の意図とは?

 ただ、藤村にとって大きかったのは「2番」から外れても、8番打者として先発で使い続けてもらえたことだった。

「もちろん将来的なことを考えました。二塁というポジションもあった。ただ、やっぱり大きかったのは彼には足という武器があったことです」

 原監督は振り返る。

「打率は悪くても、例えば彼が8番でフォアボールを選んで出塁したら盗塁して、投手が送れば1死三塁というシチュエーションを作り出せる。8番は適性ではないかもしれない。彼は1番か2番を打って最も輝く選手だと思ったけど、それでも打線から外すなら8番でも使う価値はあると思えた。そういう魅力を持った選手だったということです」

 だから逆に言えば「2番」に戻すきっかけを探ってきたともいえる。そのためには「1番・坂本」の状態が戻って、出塁率が上がることを見極めていた。

 坂本が塁に出られるようになれば、打率は多少低くても、「特別な打順」としての2番の役割は大きく広がる。その広がった役割を果たす選手としては、今のチームでは最も適性を持っているのがこの藤村だからだ。

【次ページ】 2番に復帰した藤村は巨人打線に化学反応をもたらした。

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