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被災地でありながら被災地でない!?
青森代表・光星学院は無心に戦う。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2011/08/19 19:30

被災地でありながら被災地でない!?青森代表・光星学院は無心に戦う。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

大阪生まれの沖縄育ち。青森には高校から野球留学でやってきた川上竜平選手。強肩強打を誇る外野手兼投手で、準決勝の作新学院戦では8回にソロホームランを決め、勝利を確実にした

 3番で主将の川上竜平が打つ。すると、警戒される。ならば、今度は4番・田村龍弘が打つ。すると、また、警戒される。ならば今度はと……5番の北條史也が打つ。

 次から次へと出てくる強打者たち。個性たっぷりのキャラクターを揃える光星学院打線が見事に機能している。

 2年生で4番を打つ田村はいう。

「全員がつなごうつなごうって思っているわけじゃないですよ。全員が自分のバッティングをしていれば、それが結果的につながっていくものだと、そういう意識ですね。3番の川上さんが打ったから僕も打ちたいとか思わないし、いつも、みんな打ちたいと思っているだけですよ」

日替わりでヒーローが現れる、乗りに乗った打線。

 2回戦(専大玉名)で川上が2本塁打の活躍、3回戦(徳島商)では田村が派手な逆転タイムリーを放つ。準々決勝(東洋大姫路)は目立つプレーこそ少なかったもののなんとか粘り勝ち、準決勝(作新学院)は5番の北條が大活躍した。

「センバツの時は7番に打順が落とされて悔しかった。田村は小学校から一緒で同級生でライバル心がないわけでもない。今日は川上さんと田村がマークされることは分かっていたので、チャンスを活かせてよかった」

 そう話した北條は1回裏、満塁の好機で左前適時打を放ち、チームに勢いを与える2点をもたらした。相手のミスで6回裏に2点を加え、8回裏には川上が左翼ポールに当てるソロ本塁打。仲井宗基監督をして「思い描いていた通りの展開になった」と言わしめた完勝で決勝進出を決めたのだ。

「東北勢初の優勝旗を!」

「被災した東北のために……」

 東北・青森代表の光星学院には様々な言葉がついてまわるが、現場で取材をしている限り、そうした言葉とは別の場所で選手たちは戦っているようにも見える。東北の地元記者は言う。

「青森も被災していて、実際、光星学院のある八戸も被害はあったし、彼らのランニングしている場所も被害を受けているんです。でも、彼らは(岩手・宮城・福島と違って)被災地とはあまり言われてないんで、そういうこととは関係なしに、負けたくないと思って戦っているんじゃないですかね。負けず嫌いなんで、とにかく野球で勝負して、その結果、何かが生まれたらいい、と思っているのでは」

【次ページ】 被災地としてあまり認識されていない青森代表!?

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