MLB東奔西走BACK NUMBER
メジャー選手を悩ませる人間関係。
松井秀喜復活の理由は監督の更迭?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2011/08/21 08:01
8月17日にオークランドで行なわれたオリオールズ戦に松井秀喜は、3番・指名打者で出場。4打数1安打、1得点の活躍をみせ、6-5でチームの勝利に貢献した
選手生命を左右するGMの思惑と選手データ。
試合の指揮権を握るのは監督だが、選手に留まらず監督、コーチを含めた現場の人事権を掌握しているのはジェネラル・マネージャー(GM)だ。
オフに戦力を揃える際、どのGMも自分が選んだ監督が戦力とみなし、采配しやすい選手を集めようと努力する。だが感情、性格が違う人間を相手にしているだけに、そう簡単にはGMの思うようにことが進まないものだ。そして今回も辣腕のビリー・ビーンGMの思惑通りにいかず、ゲレン前監督も松井という選手の能力をうまく引き出すことができなかった。
前述通りゲレン前監督は左先発投手の際に松井のスタメン起用を頑なに拒んでいたが、メルビン監督代行は過去のデータを参考に左右関係なく松井を使った。
これまでメジャー通算で、対右投手打率は.288に対し、対左投手打率は.286とまったく遜色ない。さらに今シーズンだけに限れば対左投手打率(.279)が対右投手打率(.257)を上回っているのだ。メルビン監督代行の判断が正しかったというのは、松井の成績が証明している。
福留や上原も監督から冷遇されて苦労していた。
こういった現象は松井に限ったことではない。
まさに同様なパターンが福留孝介選手だ。カブス1年目で対左先発投手打率(.248)が低かったということが理由で、当時のルー・ピネラ監督が左先発投手でのスタメン起用を減らす采配をとって以降、カブスではずっとその状態に置かれていた。
しかし、インディアンズにトレードされてからはマニー・アクタ監督の方針で松井同様に左右関係なくほぼ毎試合スタメン起用されるようになった。そしてここ10試合は、打率.302を残すほどに調子を上げ、今では対左投手打率(.293)が対右打者打率(.267)を上回るほどとなった。
上原浩治投手も例外ではない。
度重なる故障を克服した本人の努力もさることながら、やはり一つの転機があったと考えていい。昨シーズン故障から復帰したばかりの頃、ホワン・サムエル監督代行は上原を敗戦試合でしか起用しなかった。しかし、シーズン途中で就任したバック・ショーウォルター監督は勝ち試合のセットアップ、さらに抑えと徐々に配置転換を行なった。それが現在の上原へと繋がっているのは確かだろう。
日本人選手を中心に取材している立場からここでは日本人選手の例しか挙げていないが、似たようなケースは山ほど存在している。