球道雑記BACK NUMBER
眠れる獅子はいつ目覚めるのか?
埼玉西武ライオンズの暑く厳しい夏。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/08/18 10:30
8月15日時点でリーグワーストの9敗を喫している涌井秀章。昨季の成績14勝8敗より大幅に悪くなっている今季これまでの数字に、エースの称号が揺らぐ……
中島のキャプテン就任が選手たちに一体感を植えつけた。
16日現在で30本の本塁打を放ち、ホームランダービーを独走する中村剛也は言う。
「中島さんはキャプテンになる前から実質キャプテンと変わらない存在でしたから。ただこうして形になったことで中島さんも僕もクリ(栗山)も、よりチームを引っ張ろうと意識すると思います」
実際のところ埼玉西武・渡辺久信監督の狙いも何かを劇的に変えるのではなく少しのスパイスを加えたかった、ただそれだけな気がした。
「自分達はチームを引っ張る立場ではないですけど、そこで先輩に頼るのではなく中島さんを先頭にチームを盛り立てて行きたいです」
そう答えたのは若手の成長株・浅村栄斗だった。現在の埼玉西武はこの浅村を筆頭に、坂田遼、秋山翔吾、熊代聖人といった20代前半の選手達がラインナップされている。彼らが浅村同様、そうした意識を持つだけでも中島のキャプテン就任は意味があったのかもしれない。
「前のバッターが作ってくれたチャンスを繋いで行こうという一体感はあるんです」(浅村)
残り50試合ほどで“百獣の王”は眠りから目覚めるか?
彼がいう一体感は後半戦の戦いぶりからも見て取れた。8月10日の北海道日本ハム戦がまさにそうだった。
中島がセーフティバントを転がし、中村が満塁本塁打で応え、途中交代でマスクを被った星孝典がヒットで繋げば、栗山巧と代打の平尾博嗣がタイムリーで返し、4時間20分のシーソーゲームを総力戦で制した。
中島本人が多くを語らなくても、チームには着実に新しい何かが芽生えて来ている。百獣の王の目覚めはすぐ近くのところまで来ているのではないか……。
しかし、埼玉西武が置かれている立場は現状厳しいと言わざるをえない。
クライマックス出場圏内の3位までの差は6ゲーム。出場権のボーダーが勝率5割と考えると残り51試合を最低35勝16敗でクリアしなければならない。果たしてそれが今の西武に可能だろうか?
「まだ首の皮が繋がっている」
西武ドームのオーロラビジョンには何度も何度もこの言葉が映し出されていた。