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W杯を笑顔で勝ち取った佐々木監督。
“なでしこマネジメント”5つの法則。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byREUTERS/AFLO
posted2011/07/31 08:00
練習中、ふざけて走りまわる大野忍選手を追いかける佐々木則夫監督。多くの報道陣が押し寄せても、その明るいチームの雰囲気は変わらなかった
~その3~ 21人を平等に扱う。
今大会中、準々決勝の丸山桂里奈、準決勝の川澄奈穂美とベンチスタートの選手が日替わりで結果を残した。
その理由のひとつに、佐々木が控え組の練習を見る日を作っていることがある。
選手はやはり監督に直接指導を受けているほうがモチベーションが上がるもの。例えばJリーグでも公式戦翌日の控えなど若手主体の練習試合などでコーチが指揮を執り、内容を監督に報告するというスタイルで行うチームもあるが「監督が見ていないと、モチベーションが変わる」と話す選手も少なくない。
川澄は言う。
「試合に出たくても出る選手を決めるのは監督。だからいつ試合にでても良いように、練習から試合のつもりでやっている。急に試合に出されたからって緊張などしない」
特段変わったコメントでもなく、ありきたりなセリフだ。だが、彼女たちがワールドカップという檜舞台で言葉通りの活躍ができたのは、日頃から指揮官が見ていてくれているという、そんな信頼関係があったからなのだ。
~その4~ 少しくらい鈍感でもいい。
佐々木はなでしこたちを成熟した人間の集団であるとリスペクトしている。
その上で言う。
「ちょっとやそっとじゃあいつらに話をしても動いてくれない。試合中なんて、ベンチの遠吠えっていう感じだよ」
スウェーデン戦では川澄が自らのポジションを「変えたほうがいいのではないか?」と提案してきたのだそうだ。
仮に、繊細な神経を持つ指導者だったら、傷ついてしまうかもしれない。「それはベンチが考えるから、お前らはプレーしろ」と言い返してしまうパターンもよくある。選手からそんな提案を受けたんだよと、報道陣にあっけらかんと話すことなどできない指導者がほとんどのはずだ。
佐々木には、ある種の鈍感さが備わっているように見えるし、そのおかげでむしろ、選手たちが大胆になれているようだ。