青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
全英屈指の難コースで見えた、
今、石川遼に足りない二つのもの。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO
posted2011/07/21 10:30
2日目はポットバンカーでリズムを崩す場面も見られた。通算5バーディ、13ボギー、3ダブルボギーを叩き、メジャーでの自己ワースト14オーバーの147位。今季メジャーで初の予選落ちとなった
リンクスに臨機応変に対応した池田と対照的な石川。
運、不運の問題だったドライバーとは違い、散々だったのはアイアンショットで、スイングの乱れを修正できないままミスを重ねていった。
悪いスイングをしているアイアンは当然ダメ、なのに納得いくスイングをしているはずのドライバーもダメ。目指すスイングがあり、1つの型を基準にゴルフをしようとする石川にとって、これでは正解のない問題を出されているような苦しさだったはずだ。スイングに対して「いい」「悪い」の価値判断をもたない池田が、臨機応変に対応し、19位で予選を乗り切ったのとはなんとも対照的だった。
予選落ちした石川は「練習場でできたことがコースでできなかった」と振り返った。しかし、リンクスにおいては練習通りにやろうとする頑ななこだわりよりも柔軟性と創造性のほうが大切になる。アゲンストや横風なら低く抑え、フォローなら風に乗せる。キャリーがどれくらいで、ランは果たしてどこまで転がるのか。アプローチやパターまで含めてそういう計算が必要になってくる。硬い地面と強い海風に対する答えはヤーデージブックには載っていないのだ。
全英5度優勝を誇るトム・ワトソンが語る「本当のリンクス」とは?
石川と同世代の22歳、リッキー・ファウラーはそうしたツボを抑えてメジャー自己最高の5位に入った。
「リンクスでいいプレーをするには、きちんとボールをコントロールできないとダメ。それは練習場で打つようなショットとは限らない。想像力を働かせて、そのたびに違ったショットを打てるかどうか。それがリンクスゴルフだと思う」
フィル・ミケルソンも「アメリカでは絶対に打たないようなショットが要求される」と低空のティーショットや上げないアプローチなど、さまざまなオプションを駆使して全英自己最高の2位となった。
全英オープンを優勝すること5回、今回も61歳ながら涼しい顔で予選を通って22位となったトム・ワトソンはこう語っている。
「世界中にリンクスと呼ばれるようなコースはたくさんあるけど、それは本当のリンクスじゃない。これだけ硬くて、引き締まっていて、球がよく転がるコースじゃないとリンクスの経験は積めない。これだけの厳しいコンディションと強風を体験しない限り、リンクスを本当に理解したことにはならないんだよ」