セリエA コンフィデンシャルBACK NUMBER
どうなる?最後のプレイオフ。
text by
酒巻陽子Yoko Sakamaki
photograph byAFLO
posted2005/06/13 00:00
セリエAのプレイオフが今季限りで幕を閉じる。これまでプレイオフは、リーグ優勝、残留、そして欧州カップ戦出場枠争いと、それぞれの「可能性を含んだ最終戦」という役割を果たしてきたが、来季セリエAではもう見られなくなることになった。
この新規定の導入は、言うまでもなく、長すぎるシーズンの短縮が目的である。とりわけ来季は、世界最大のイベントであるワールドカップ(ドイツ大会)を控えているため、FIFAが、各国のリーグ、カップ戦の5月14日までに終了するようにと義務付けたことから、セリエAもその指示に従ったのである。
そもそも、イタリアのように、最終節を終了しても決定できない順位をプレイオフに依存しているのはヨーロッパ諸国でも稀で、イギリス、ドイツ、フランスは総合成績の得失点差で順位を決定。またスペイン、ポルトガルの場合は、直接対決の成績、そして得失点差で順位を付けるなど、それぞれリーグの延長による選手への負担を回避している。つまり、セリエA以外のリーグが、最終節をあくまでも「最終戦」として重きをおいているのに対し、イタリアの場合は、プレイオフをスポーツマンシップに則った順位付けの手段と解釈している。プレイオフがリーグ戦と同じようにホームアンドアウェーで行われる理由も、「正当な試合」という考えが根底にあるからだ(かつては中立地で1試合のみだったが、周辺の治安の維持を理由にホームアンドアウェー方式に変更)。
このようにスポーツ精神を前提とした上での「真剣勝負」と謳っているプレイオフだが、実は経済に基づいて行なわれているという側面もある。注目される試合だけに背後で「マネー」が動くのは当然で、スポーツマンシップを守ろうという勢力にちゃっかりと「ビジネス」も便乗しているのだ。
例えばセリエBに至っては、昨シーズンに導入されたレギュレーションによりプレイオフが急増。プレイオフのスペクタクルな試合が増えれば増えるほどセリエBの人気は上がるはず、といったプロリーグ連盟の利害的「策略」に完全にはまっている。
確かに、プレイオフは、信念を持って闘う「前向きな姿勢」が見られるだけに人気は高く、近年イタリアサッカーの、6月の風物詩となっているが、参加する側にとっては、ありがた迷惑なプレイオフ、という指摘もある。
「15日間でなんとか調整できればいいが……」。セリエA最後のプレイオフとなるボローニャ−パルマ戦(6月14日、18日)に向けて、パルマのバラルディ代表取締役は、苦虫をかみ潰したような表情で語った。最終節に受けたイエロー、レッドカードで主力選手6人が出場停止。そのためコンフェデレーションズ・カップに召集されていたオーストラリア代表のMFブレッシャーノ、グレッラの2人を急遽呼び戻し、残留をかけた「最終戦」のために何とか手を打った。
またボローニャのパトロンであるガッゾーニ氏は「虚像のカンピオナート(リーグ)であっても黙って受け入れるしかない」と嘲笑し、クラブにとって2週間の調整が決して楽でないことを指摘した。
文字通り「最後の闘い」となる今回のプレイオフは、どうやら寂しい結末となってしまいそうだ。