杉山茂樹のサッカー道場BACK NUMBER
サッカーの国際的平板化と
それでも残る代表チームの“癖”。
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byTakuya Sugiyama
posted2009/09/22 08:00
9月5日のオランダ戦では後半20分で力尽きた岡田ジャパン。「癖」や「爆発力」となる可能性のあった本田圭佑もチームになじめずに終わった
ユーロ2008準優勝、’06年W杯3位、’02年W杯準優勝。国際舞台でドイツほどコンスタントに成績を残している国もめずらしい。ユーロ2000やユーロ2004では、グループリーグで消えているが、決して高くない選手のネームバリューを考えると、その割に良くやっている国と言うべきだろう。
愚直で、ステディ。かつ最後まで諦めない強靱な精神力は、俗に「ゲルマン魂」と言われている。W杯やユーロのように大会が長くなればなるほど高まる結束力で、他国を大きくリードしている。決してサッカーは巧くない。だが、サッカーに必要なそれ以外の要素では他国をリードしている、少しばかり不思議な国だ。
とはいえ最近、少なくともピッチの上で、ゲルマン魂を拝む機会は確実に減っている。クラブレベルの試合でもそうだ。バイエルンがマンチェスターUに大逆転負けを喫したのは、’98-’99のチャンピオンズリーグ決勝だが、そのあたりから徐々に、普通の国になってきているような気がする。
あのイタリアもアルゼンチンも……なんだかフツ―に?
イタリアも人並み外れた強烈な癖というか魂を持つ国だった。先制点を挙げて1-0で逃げ切る術は、間違いなく世界一だった。だった、と過去形にするのは、こちらも最近、それを拝む機会が減っているからだ。代表でもクラブでも。試合運びはずいぶんオーソドックスになっている。
際立つ癖を持った国はまだある。アルゼンチンだ。かつてのシメオネや現在のマスチェラーノに代表される「くそ根性」(良く言えばガッツ)がこの国にはある。審判の目が届かないところで反則する術にも長けている。100の力を120発揮する爆発力もある。だが、今回の予選では、そんなアルゼンチンらしさが不発に終わっている様子だ。ずるくない素直なサッカーをしている。
勝負強く変化したスペインは“鬼に金棒”。
アルゼンチンと対照的なのはブラジルだ。こちらはいつも「馬なり」だ。淡々と素直なプレーに終始する。100の力を120出すタイプではない。くそ根性の持ち主は意外に少ない。
欧州でブラジル的な国を挙げるとするとオランダになる。素直に相手に向かっていく。悪く言えば、逆境に強いタイプではない。ここ一番にお人好しの集団に見える。
スペインもどちらかと言えばオランダ似だ。ユーロ2008を制するまで、代表チームが大舞台で勝てなかった理由だ。イタリア、ドイツ、アルゼンチンに比べると、随所に油断や隙が目立つ。
昨季のチャンピオンズリーグ準決勝で、チェルシーを最後にうっちゃり、その勢いで優勝を果たしたバルセロナは、そうした意味ではスペインらしくなかった。従来のスペインチームにはない勝負根性を見せた。鬼に金棒だったわけだ。