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ゴールデングラブ賞に異議アリ。
鳥谷敬の守備力に正当な評価を!
text by
田端到Itaru Tabata
photograph byHideki Sugiyama
posted2009/11/26 10:30
2009年のゴールデングラブ賞で、個人的にもっとも注目していたのはセ・リーグの二塁手と遊撃手部門だった。
私見を言わせてもらえれば、二塁手は田中浩康(ヤクルト)、遊撃手は鳥谷敬(阪神)がふさわしいと見ていた。しかし受賞したのは、荒木雅博と井端弘和の中日コンビで、両選手とも6年連続のタイトルである。これを数字で検証してみよう。
守備力評価は難しい。レンジファクター指数を使うと……。
守備力の評価というのは難しい。守備が上手いか、上手くないかは記録に残りにくく、どうしても見た目や印象の判断になる。ゴールデングラブも、今季の日本ハムのように優勝球団に受賞者が集中してしまうなど、ご祝儀的な選出が多い。
それでも数字を頼りに守備力を判断する方法はいくつかあり、最近、認知度が高まっているのが「レンジファクター(以下RF)」だろう。以前にも紹介したが、いくつ失策したかではなく、いくつのアウトを獲ったかで守備力を計る指標だ。
RF=(刺殺+補殺)÷守備イニング×9
これで1試合平均いくつのアウトに寄与したかが計算できる。ただし、守備イニングは公式記録として発表されていないため、本稿では簡易版として以下の式を用いる。
簡易RF=(刺殺+補殺)÷試合数
最近は、熱心なファンが独自に守備イニングを調べてブログで発表するなどの光景も見られるが、NPBは守備イニングの記録くらい軽く持っているはずなのだから、出し惜しみせずに公表して欲しい。試合数を用いると、途中交代の多い選手はその分、低い数値しか出なくなる。
まず'06年以降のセ・リーグ遊撃手、レンジファクター・トップ3を記してみよう。
選手名 | RF | 失策数 | |
---|---|---|---|
1位 | 井端(中日) | 4.91 | 4 |
2位 | 鳥谷(阪神) | 4.82 | 21 |
3位 | 梵(広島) | 4.76 | 12 |
選手名 | RF | 失策数 | |
---|---|---|---|
1位 | 梵(広島) | 4.96 | 13 |
2位 | 井端(中日) | 4.77 | 6 |
3位 | 鳥谷(阪神) | 4.46 | 11 |
選手名 | RF | 失策数 | |
---|---|---|---|
1位 | 鳥谷(阪神) | 5.13 | 15 |
2位 | 梵(広島) | 4.43 | 11 |
3位 | 坂本(巨人) | 4.31 | 15 |
注目して欲しいのは昨季の鳥谷の数値だ。RF5.13というのは、遊撃手としてきわめて高いレベルにあり、本来なら、文句なしにゴールデングラブを受賞するべきだった。実際、横っ飛びで難しい打球を処理するファインプレーも多く、併殺獲得数もダントツだった。
受賞を妨げたのは、失策の多さと、井端という名手の存在だったのだろうが、鳥谷のホーム甲子園球場は土のグラウンドのため、失策が出やすいという不利がある。
また、'08年の井端はケガの影響がはっきりと見て取れるほど、低い守備記録しか残しておらず、RFも4.25。プロ入り以来、最低の数値で、とてもゴールデングラブに値するような成績ではなかった。
「いくらたくさん打球をさばいてアウトにしても、失策が多ければ、守備を評価されないのか……」
鳥谷がそう絶望したのかどうかわからないが、今季の鳥谷は「エラーをひとケタにしたい」と、珍しく守備の目標を口にして、シーズンにのぞんだ。